流通研究
Online ISSN : 2186-0939
Print ISSN : 1345-9015
ISSN-L : 1345-9015
論文
市場間の費用格差を伴う複占における統一価格規制の分析 -日本の新聞産業を例として-
二替 大輔
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 12 巻 3 号 p. 3_13-3_24

詳細
抄録
本稿では,市場間で需要と費用に関して非対称性がある場合の企業の価格戦略の選択による利潤と経済厚生への効果について分析する。都市市場と地方市場の規模の差が極端に大きくなく,企業が都市市場において費用の優位性を持つとき,価格を統一して各市場の利潤をまとめて最適化するときの利潤が,別々の価格で市場ごとに利潤を最適化するときの利潤を上回る領域が存在することが示される。これは,統一価格のもとで,都市市場で価格が上昇し,価格カルテルに近い状態が均衡として成立するからである。この結果は,日本の新聞産業において,各新聞社が「新聞特殊指定」の廃止に反対する理由を表している。また,地方市場で赤字が発生するとき,新聞社は都市市場で得た利益を補填することで地方市場を閉鎖することなくユニバーサルサービスを実現していることも示される。
著者関連情報
© 2009 日本商業学会
前の記事 次の記事
feedback
Top