抄録
本稿の目的は,商業集積のマーケティング活動を考える前提として,商業集積の組織に関わる既存研究を整理し,その活動主体となる組織の特性を明らかにすることである。商業集積のマーケティング活動を「商業集積の小売ミックスを統制し,商業集積の事業者の利益や顧客満足を高める活動」とした場合,その活動を担う商業集積の組織の多くは,組織構成員の独立性が高く,またその活動が影響を与える空間的範囲も限定される,不完全な組織特性をもつ。そして,そのような不完全な組織では,合意形成に工夫を施しながら自己組織的な性質を利用したマーケティング活動を実行する必要がある。既存研究から示唆される以上の組織特性を踏まえた上で,将来的に商業集積マーケティング論を構築するための課題を提示する。