抄録
環境変化に対応してマーケティング戦略の転換が要請される状況において,企業がその戦略転換を実行できないことがある。この問題については,これまで移動障壁として市場構造要因による説明がなされてきたが,本研究では企業が組織的な要因により戦略転換が制約される局面を捉えることにする。とくに脱コモディティ化のための製品差別化戦略の転換を例にあげて,企業がある組織アーキテクチャを選択し,それと補完的な制度と組織能力が形成されることに基づいて,その組織アーキテクチャと整合しない別の戦略への転換の困難性がもたらされる局面を説明するものである。