流通研究
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特集論文
新製品導入時のサンプリング・プロモーション―個人内外のプロモーション効果―
無料のサンプル配布は新製品を市場導入する際によく用いられるプロモーション手法である。その効果として期待されるのは、サンプルを受け取った本人が実際に製品を購買すること、さらに彼らがクチコミすることでほかの人々の認知を促したりトライアルを誘発したりすることにある。本研究では、市場導入される前の新製品を用いて無料サンプリング・プロモーションを行い、サンプルの受け手の実購買ならびにクチコミ発信にかかわる要因を検討した。その結果、サンプル対象製品の購買や他者へのクチコミといったプロモーション効果は、消費者のカテゴリー経験に依存することがわかった。つまり、当該カテゴリーの既存ユーザー、ならびに製品特性において類似性の高い周辺カテゴリーのユーザーではそれらのノンユーザーよりも効果が強く見られた。当該カテゴリーに対して関与が高く製品判断力が備わっている人をターゲットに無料配布した方が、高いプロモーション効果を得られると言えよう。また、クチコミの誘発においては、当該製品の話題性による事前認知が効果を持つことが明らかとなった。このことから、無料サンプリング・プロモーションによるクチコミ発生には当該製品にかかわる情報が事前にある程度普及している土壌が必要であることが示された。
井上 淳子
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2014 年 16 巻 2 号 p. 97-117

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© 2014 日本商業学会
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