本研究の目的は市場志向概念を小売業に適用し,市場志向と成果の関係を解明することである。本研究は製造業を分析対象とする先行研究から得られた命題と仮説に基づいて,小売業における戦略志向,組織構造,市場志向,そして成果の関係について分析枠組を構築する。
チェーン小売業者に対する質問票調査の結果,次の点が明らかとなった。第1にチェーン小売業者においても,市場志向が成果に影響することが明らかとなった。第2にチェーン小売業者の組織構造が市場志向に影響を及ぼすことが明らかとなった。第3に市場志向を構成する3つの段階において,市場知識の生成からの直接的および間接的なパスの存在することが明らかとなった。本研究はこれらの分析結果を踏まえて,小売業の市場志向研究において組織構造の影響を考慮した分析の必要性,およびチェーン小売業者において市場志向と成果の関係を高めるように組織をデザインすることの重要性を含意として提示する。