流通研究
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18 巻, 2 号
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特集論文
  • 累積的顧客満足モデルによる分析
    小野 譲司
    2016 年 18 巻 2 号 p. 3-31
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    サービス品質やコスト・パフォーマンスの強化によって、顧客満足とロイヤルティを高め、競争優位を確立する顧客戦略は、満足.ロイヤルティ仮説を基盤としている。本研究では、この仮説に基づいた拡張型累積的顧客満足モデルを構築する。満足の源泉としての期待効果、品質効果。価値効果、そして、ロイヤルティ(再購買意図)の源泉としての満足効果、推奨効果、ロックイン効果が利用頻度と顧客シェアという顧客特性の違いによって、いかに異なるかを理論的・実証的に明らかにする。

    実証研究では、エアラインとホテルを分析対象とした実証研究の結果、利用頻度と顧客シェアで分けた顧客セグメントの違いによって、満足やロイヤルティの源泉が異なること、業種による違いが見られることが明らかになった。満足やロイヤルティの形成パターンが異なる顧客セグメントの異質性を踏まえた中で、企業がどのような顧客戦略の指針を描くかという問題に対して、拡張型顧客満足モデルは、一つの理論的基盤を提供するものである。

  • 岸谷 和広
    2016 年 18 巻 2 号 p. 33-52
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、ソーシャルネットワーキングサイト(SNS)上でのコミュニケーションに関する双方向性(双方向コミュニケーション、ユーザーコントロール、反応性)とSNSがユーザーに提供する価値、SNSに対するユーザーのロイヤルティとの関係を検討することである。同時に、それぞれの関係に対するSNSの技術的・社会的特性(プラットフォーム)の影響(モデレート分析)を検討する。プラットフォームとして、フェイスブックとツイッターを取りあげ、それぞれのユーザーに対してインターネットによる質問紙調査を行い、共分散構造分析を用いて分析した。その結果は、1)それぞれのプラットフォームにおいて、双方向性と反応性は、社会価値と情報価値それぞれに対して正の影響を与えていたのに対して、ユーザーコントロールは、情報価値に対して負の影響を与えていた。2)プラットフォームの効果として、フェイスブックユーザーはツイッターユーザーよりも情報価値が与えるサイトロイヤルティへの影響が大きいのに対して、ツイッターユーザーはフェイスブックユーザーよりも社会価値が与えるサイトロイヤルティへの影響が大きいことがわかった。その結果を受けて理論的そして実践的含意を論じ、本研究の問題点と将来の研究の方向性を示した。

  • チェーンストアの戦略志向と組織構造に焦点を当てて
    坂川 裕司
    2016 年 18 巻 2 号 p. 53-75
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は市場志向概念を小売業に適用し,市場志向と成果の関係を解明することである。本研究は製造業を分析対象とする先行研究から得られた命題と仮説に基づいて,小売業における戦略志向,組織構造,市場志向,そして成果の関係について分析枠組を構築する。

    チェーン小売業者に対する質問票調査の結果,次の点が明らかとなった。第1にチェーン小売業者においても,市場志向が成果に影響することが明らかとなった。第2にチェーン小売業者の組織構造が市場志向に影響を及ぼすことが明らかとなった。第3に市場志向を構成する3つの段階において,市場知識の生成からの直接的および間接的なパスの存在することが明らかとなった。本研究はこれらの分析結果を踏まえて,小売業の市場志向研究において組織構造の影響を考慮した分析の必要性,およびチェーン小売業者において市場志向と成果の関係を高めるように組織をデザインすることの重要性を含意として提示する。

特集論文(研究ノート)
  • ベトナム市場における展開を中心にして
    佐原 太一郎, 渡辺 達朗
    2016 年 18 巻 2 号 p. 77-99
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    東南アジアをひとつの消費市場として捉える小売企業の参入が相次ぎ、日系小売企業にとっても東南アジアの重要性は高まってきている。では、東南アジアに進出する外資系小売企業は、どのように進出先市場にアプローチしているのか。本研究では研究対象を東南アジアにおける食品・日用品小売市場に限定して検討する。まず小売業の国際化戦略の研究領域で議論されている標準化と現地化という従来の分類と、地域化(リージョナリゼーション)という従来とは異なる考え方を整理したうえで、リージョナル戦略モデルを検討する。次に東南アジアを中心に国際展開する外資系小売企業を「東南アジアリージョナル小売企業」と位置付けるとともに、その代表的小売企業グループの東南アジア展開を概観する。そのうえで、彼らが競合関係となってぶつかり合っているベトナム市場を取り上げ、同市場における彼らの国際展開の特徴について、リージョナル戦略の観点から検討する。

投稿論文(研究ノート)
  • 垂直統合が競争優位をもたらす要因
    森山 一郎
    2016 年 18 巻 2 号 p. 101-118
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    小売業者主導の垂直的流通システムについては、これまで資本統合を伴わない管理型を中心に検討が進められてきた。しかし、実際には、小売業者が生産段階の垂直統合に乗り出す例は少なくない。このような企業型と呼ぶべき生産段階への関与は、小売業者主導の垂直的流通システムに関して看過されてきた嫌いがある。そこで本稿では、その最も初期的な事例であり、かつ長期にわたる取り組みを経て品質面での競争優位を獲得したダイエーの牛肉事業を取り上げ、その展開プロセスとそれが成果を生むに至った要因を検討した。

    本稿における検討の結果、ダイエーの牛肉事業が垂直統合を通じて競争優位を獲得することができたのは、それが牛肉という漸進的な技術・品質改善が有効な商品分野であったこと、垂直統合の継続性が担保されたこと、過度に物量を追求しなかったことによるものであることが示唆された。このような検討結果は、小売業者主導の垂直的流通システムに関して、垂直統合の観点も含め、さらに詳しく検討する余地があることを示している。

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