流通研究
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取引のネットワークと製品開発の成果
結城 祥
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2017 年 20 巻 2 号 p. 49-64

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抄録

製造業者による製品開発は,自身が埋め込まれた取引ネットワークの特性,すなわち顧客との取引関係やチャネル構造によって大きな影響を受けると考えられる。しかしマーケティング・チャネル論は,取引関係の管理やチャネル構造の設計・選択が製品開発成果に及ぼす影響のメカニズムを等閑視してきた。そこで本論は,この既存研究の空白地帯を埋めることを目的に,マーケティング・チャネル論と製品開発論に依拠して仮説を導出し,わが国の製造業者から得られたデータに基づく実証分析を行った。その結果,①顧客群との信頼関係構築によって,製造業者は良質な市場情報の入手が可能になり,それによって製品の有用性が向上すること,②顧客群との信頼関係は製造業者の自律性を高める効果も有しており,その結果,新奇性の高い製品の開発が促されること,③チャネルの閉鎖性は製造業者の自律性を低下させ,新奇な製品の開発を妨げる効果を持つことが見出された。

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© 2017 日本商業学会
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