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投稿論文
カスタマー・アドボカシー志向尺度の開発
山岡 隆志
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2020 年 23 巻 1 号 p. 1-20

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Abstract

文献レビューより導いた下位概念を用い,他の要素との相関を検討した先行研究はあるが,カスタマー・アドボカシー志向の中心概念の構成要素を入念に探求したものは,これまでなかった。そこで本研究において,その中心概念の構成要素を抽出し,様々な企業カテゴリーに適用可能な汎用性の高い尺度を開発する。先行研究とインタビュー調査から得られたデータを基に行った質的調査から,構成要素の抽出と整理を行った。事前調査を行った後,不変性の確認を行うため時期とサンプルを分けて2度の本調査を実施した。その結果,様々な企業カテゴリー間で使用できる汎用性と頑健性を兼ね備えた,5因子15項目で測定できる尺度を開発した。

1  はじめに

企業や製品に対して顧客ロイヤルティが最も高まった状態の顧客をAdvocate(アドボケイト,推奨者・擁護者)と呼び(Christopher, Payne, & Ballantyne, 1991Bendapudi & Berry, 1997),このアドボケイトを多く育成して企業戦略に活用し顧客利益の最大化を志向する戦略が,カスタマー・アドボカシー志向(Customer Advocacy Orientation,以下,CAO)である(Urban, 2005b)。アドボケイトは,企業や製品を信頼し,企業に代わって他の顧客に企業や製品を推奨し(Urban, 2004),たとえ企業が非難を受けるような困難な状況に直面しても,企業を擁護する(Anderson, 1998Fullerton, 2003Harrison-Walker, 2001)。

Christopher et al.(1991)は,「ロイヤルティのはしご」を使って,顧客のロイヤルティのステップを説明した。「見込み客」(Prospect)から「購買顧客」(Customer)となり,2回以上購入した「リピート顧客」(Client),心理的な忠誠心が発生している「サポーター」(Supporter),そして,ロイヤルティの最終形態をアドボケイトと位置づけた。その後,アドボケイトに関する研究が行われ,中心概念として「推奨意向」と「購入促進」の2項目とするもの(Jones & Taylor, 2007Xia & Kukar-Kinney, 2013),「正のクチコミ」を加えた3項目とするものがあり(Fullerton, 2005Yi & Gong, 2013Shukla, Banerjee, & Singh, 2016),「擁護」を加えた研究も存在する(Bendapudi & Berry, 1997)。Kotler, Kartajaya, and Setiawan(2016)は,デジタル時代のマーケティング環境における顧客の育成段階を示す5Aモデルを提示しており,ブランドを深く理解したロイヤルティが高いアドボケイトを最終形態として目指すことを提唱している。これは,近年のデジタル環境において,企業がCAOを採用する意義を示している。

現代のマーケティング環境に合致したCAOへの関心は高まっており1),CAO尺度構築はその関心に応えることができる。しかし,先行研究レビューにより質問項目を導き,CAOと他の要素との相関関係を検討した先行研究はあるものの(Roy & Eshghi, 2013Roy, 2015),CAOの中心概念を形成する具体的な項目の整理まで行ったものはなかった。さらに,大規模サンプルによる実証分析は実施されておらず,頑健性のある尺度開発はされていないのが現状である。顧客マネジメント関連のより細分化された様々な尺度開発はその必要性から行われており,本稿のCAOの尺度開発は,それらと同じ位置づけの研究と言える。

このような点から,本研究の目的は,CAOを構成する要素を抽出し,その要素に従って頑健性のある尺度を開発することにある。様々な企業カテゴリー間における不変性の確認を行うことにより,汎用性の高い尺度開発を試みているところが,本研究の特徴と言える。

2  中心概念の抽出

2.1  質的テキスト分析

探索的なインタビューを実施するために,経営者または経営に携わる部長級以上の実務家63名に依頼し32名から承諾を受けた。デプスインタビュー形式で,一人90分程度の聞き取り調査を2016年6月から2017年1月の期間に行い,「企業のカスタマー・アドボカシー志向は,どのような企業行動や考え方と言えるか?」という質問に対する回答を音声に記録しテキストデータに変換してまとめた。このテキストデータに対してテキストマイニングを行った。その結果,出現回数が2回以上あるキーワード56ワード,共起回数が2回以上ある56組を抽出した(別表1には,出現回数が3回以上あるキーワードが示されている)。

次に,これら抽出したワードが含まれている文章を中心に,質的データ分析ソフト(Qualitative Data Analysis Software,以下,QDAソフト),「MAXQDA Analytics Pro12」を使用して,質的テキスト分析を行った。QDAソフトにおいて,文字テキストを読み取っていくなかで,データそれ自体の中から浮かびあがってきたコードを活用するというのは,質的データ分析のコーディングにおけるきわめて重要な手順と言える(佐藤,2008)。本研究では,テキストマイニングによる頻出度が高いキーワードが含まれている文を中心に分析を行い,いくつかのコードを帰納的コーディングによって導いていった。そして,導かれたコードを元に,演繹的コーディングによって,テキストデータにその意味合いに対応するコードをつけていく作業を行った。この帰納的コーディングと演繹的コーディングを同時並行的に行える点は,QDAソフトのインタラクティブ性という特徴をよく表している(佐藤,2008)。

尺度項目の参考となった実際の回答内容を紹介し,帰納的コーディングの具体例を示す。「見返りを考えないで顧客に得をさせる。顧客利益を優先させる」,「相手の立場にたって,顧客利益につながることを第一にする」という回答があり,「顧客利益最大化」のコードを導いた。「アドボケイトにブランドを語ってもらえるように企業が支援する。パートナーとして相互支援活動を行う」,「アドボケイトは企業活動に参加してくれる。顧客が参加しやすい環境の整備に気を遣っている」という回答があり,「相互支援」のコードを導いた。また,「情報が非対称であるところに透明性の高い情報を提供する」,「企業から正しい情報を送り続ける」という回答があり,「透明性」のコードを導いた。「顧客に誠実であること」,「約束したことはきちっと守る」,「営業が行かなくても,勝手に顧客に受け入れられる」という回答があり,「誠実性」のコードを導いた。「最高の製品を追い求めること」,「顧客に感動してもらえることを一人一人が心がけ,高いサービス品質を提供する」という回答があり,「最高の製品」のコードを導いた。「長期的な判断をする」,「長期的な関係作りをする」という回答があり,「長期的視点」のコードを導いた。このように,帰納的コーディングにより,「顧客利益最大化」,「相互支援」,「透明性」,「誠実性」,「最高の製品」,「長期的視点」の6コードに整理し,演繹的コーディングにより,テキストデータにこれらのコードを割り付けた。そこで,コーディングされた内容を吟味すると,「長期的視点」はCAO特有の要素でないと判断し削除した。よって,質的テキスト分析の結果,CAOの中心概念として,「顧客利益最大化」(maximization of customer benefit: MCB),「相互支援」(mutual support: MS),「透明性」(transparency: TP),「誠実性」(integrity: IN),「最高の製品」(best product: BP)の5つの因子を抽出することができた。そして,質的テキスト分析の結果は,それぞれの因子の具体的な項目内容を作成するための参考とした2)

2.2  先行研究レビュー3)

マーケティング戦略としてのCAOに関する研究は,リレーションシップ・マーケティング4)および顧客志向に関する研究5)と関連が深い。Grönroos(1996)は「マーケティングとは,企業の市場における関係性を管理することである」とリレーションシップ・マーケティングを包括的なマーケティングとして定義した。リレーションシップ・マーケティングは,マーケティングを包括しようとする幅広い意味をもつ概念であるため,細分化された下位概念でとらえることは意味がある。Urban(2005b, p. 18)は,「リレーションシップ・マーケティングの基本は顧客を理解し,そのニーズを満たすことにあり,CAOは,顧客の利益の最大化や顧客とのパートナーシップの構築を基礎としている」と述べている。CAOは,リレーションシップ・マーケティングの下位概念に位置づけることができる(Urban, 2005b)。CAOは,企業と顧客の関係構築に強い影響を与えることが分かっている(Wagner & Benoit, 2015)。

Drucker(1954)が「事業の目的は顧客を創造することである」と述べ,Levitt(1960)が「真のマーケティング・マインドを持った企業は,消費者が買いたくなるような値打ちのある製品やサービスを創造しようとする」と説明したことにより,それまでの販売志向に代わり,顧客志向の重要性が強調された。しかし,顧客志向は1970年代までは時代背景から懐疑的な態度でとらえられていたが(Day & Wensley, 1983),1980年代に入ると注目されるようになった。

顧客志向研究は,企業戦略の観点から組織レベルで行う分析(Narver & Slater, 1990Kohli, Jaworski, & Kumar, 1993)と,従業員の思考や行動の観点から個人レベルで行う分析(Saxe & Weitz, 1982Brown, Mowen, Donavan, & Licata, 2002)に分かれて行われており,本研究は組織レベルでの顧客志向研究に基づくものである。Kohli et al.(1993)は,市場情報の生成,普及,そして反応に基づく企業活動と顧客志向を位置づけた。Narver and Slater(1990, p. 21)は「標的顧客に継続的に優れた価値を生み出すために,顧客を十分に理解すること」と顧客志向を定義した6)。顧客志向と企業業績の関係について分析され,顧客志向の重要性が多くの研究で示されてきた(Slater & Narver, 1994, 2000Kirca, Jayachandran, & Bearden, 2005Frambach, Fiss, & Ingenbleek, 2016Pekovic & Rolland, 2016)。

近年では,顧客理解を目的とする顧客マネジメントの発想の中で,顧客志向は企業にとって益々重要な考え方となってきている(Shah, Rust, Parasuraman, Staelin, & Day, 2006Kumar, Shah, & Venkatesan, 2006)。そして,顧客マネジメントを進め生き残るため,企業は最適な戦略志向の開発を行う必要がある(Ramani & Kumar, 2008)。Kennedy, Goolsby, and Arnould(2003)は,これまでの研究は顧客志向がどのように実行されてきたか,その具体的な中身について言及しているものは限られていると指摘している。そこで,顧客マネジメントに関わる,より細分化された具体的な課題を解決するための様々な組織レベルでの志向尺度が開発されてきた。

Conduit and Mavondo(2001)による1因子7項目から構成される「内部顧客志向」(internal customer orientation),Lemon and Verhoef(2016)が「インタラクティブ顧客志向」(interactive customer orientation)と述べたRamani and Kumar(2008)による4因子13項目から構成される「インタラクション志向」(interaction orientation),Blocker, Flint, Myers, and Slater(2011)による1因子6項目から構成される「対応型顧客志向」(responsive customer orientation)および1因子6項目から構成される「積極型顧客志向」(proactive customer orientation),Arnold, Fang, and Palmatier(2011)による5因子16項目から構成される「顧客獲得志向」(customer acquisition orientation)および5因子16項目から構成される「顧客維持志向」(customer retention orientation),Leo and Russell-Bennett(2014)による3因子28項目から構成される「顧客志向の逸脱」(customer-oriented deviance),Karpen, Bove, Lukas, and Zyphur(2015)による6因子24項目から構成される「サービスドミナント志向」(service-dominant orientation)などがある。

Kotler and Keller(2016)は,「現代的顧客志向組織では,顧客を最上位に位置づけた逆さまのピラミッドの両側にも顧客を位置づけ,全ての階層の従業員は顧客を知り,接し,サービスを提供することに自ら関わらなければならない。既にいくつかの企業は,顧客第一のビジネスモデルを作り上げており,CAOこそが彼らの戦略であり,競争優位の源泉である」と述べている。CAOは,顧客志向の新たな捉え方として注目されている概念のひとつである。組織レベルでの顧客志向として代表的なKohli et al.(1993)および Narver and Slater(1990)とCAOについて,具体的な項目で比較すると異なる内容であり,Kohli et al.(1993)Narver and Slater(1990)が唱える顧客志向は,CAOと比べると比較的容易に実現可能な内容であることが分かる(表1,別表2)。Yeh(2016)は,「CAOを独立した概念として位置づけ,Nasution and Mavondo(2008)が提唱する因子を元に構築した市場志向がCAOの先行要因となること」を実証している。Antony(2015)は,「CAOは組織的な顧客志向の取り組み」と述べ,Lawer and Knox(2006)は,「CAOは高次元の顧客志向と見なす」と説明し,CAOが真の顧客志向を評価しうる概念になることを指摘している。よって,CAOは,企業戦略としての顧客志向の一つの独立した形態として位置づけることができる(Roy, 2013)。本稿では,このようなより細分化された尺度開発研究に準じ,CAO尺度の開発を行うこととする。

表1. 探索的因子分析
[調査1] [調査2]
因子1 因子2 因子3 因子4 因子5 クロンバックα 因子1 因子2 因子3 因子4 因子5 クロンバックα
IN01 貴社は,顧客にとって,不適切な販売活動は行わない。 .940 –.012 .071 –.051 –.086 .892 .933 .025 –.012 –.027 –.069 .911
IN02 貴社は,顧客に対して,常に誠実な対応をとることを優先している。 .845 .112 –.039 –.010 .007 .871 .048 .003 .009 –.005
IN03 貴社は,顧客にとって,不要な販売活動は行わない。 .775 –.051 –.049 .086 .052 .847 –.053 –.016 .047 .029
BP01 貴社は,競合他社に比べ,どこよりも価値ある製品・サービスを,提供するようにしている。 .024 .926 –.045 –.005 .001 .930 .005 .934 –.061 .010 –.010 .911
BP02 貴社は,競合他社と比べ,最高の品質の製品・サービスを,開発することに対して積極的である。 –.036 .897 .069 .035 –.058 –.043 .871 .070 .009 –.035
BP03 貴社は,顧客の期待を大幅に上回る製品・サービスを提供することを,常に心がけている。 .070 .836 .002 –.016 .048 .086 .791 .019 –.019 .045
MS01 貴社は,顧客と企業が,共に価値を創り上げる考え方を取り入れた活動を行っている。 .053 –.048 .957 .011 –.058 .870 .117 –.052 .819 –.066 .015 .857
MS02 貴社は,顧客をパートナーとして位置づけている。 .093 –.014 .819 –.062 .018 .012 .005 .847 .079 –.014
MS03 貴社は,顧客参加型で,製品・サービスを共同開発する取り組みに積極的である。 –.191 .112 .679 .122 .029 –.152 .061 .766 .067 –.035
TP01 貴社は,自社と他社の製品・サービスに関して,良い点と悪い点が比較できる情報を提供している。 .037 .032 –.042 .959 –.091 .862 .050 –.007 –.001 .890 –.047 .868
TP02 貴社は,自社と他社の製品・サービスに関して,客観的に評価ができる仕組みを顧客に提供している。 –.095 –.004 .097 .813 .039 –.076 .008 .077 .848 –.012
TP03 貴社は,自社にとって不利益な情報であっても,顧客へ積極的に情報を公開している。 .191 –.029 .019 .513 .171 .102 .004 –.022 .597 .181
MCB01 貴社は,自社の利益より,顧客の利益を優先している。 –.064 –.025 –.063 –.024 1.006 .797 –.050 –.044 –.067 .006 .959 .822
MCB02 貴社は,常に顧客の利益が最大化することを第一に考えている。 .087 .111 .176 –.028 .561 –.037 .051 .029 .119 .577
MCB03 貴社は,自社より他社の製品・サービスの方が,顧客の利益につながる時は,他社の製品・サービスを薦める。 .037 –.032 .065 .201 .428 .099 .062 .236 –.053 .577

山岡(2010a)では,先行研究レビューからCAOの中心概念について,「MCB」,「MS」,「TP」,「BP」の4因子の仮説導出を行っており,山岡(2015)ではさらなる先行研究レビューの結果,これに「IN」を加えた5因子によってCAOの中心概念を整理している。本稿では,CAOの中心概念に焦点をあてた先行研究レビューを行い整理した(別表3)。それぞれの研究において使用されている因子は異なるものの,全体的に「MCB」,「MS」,「TP」,「BP」,「IN」の5因子に集約された。また,因子および項目と先行研究の関係についても整理した(別表4)。そして,CAOとそれぞれの因子との関わりについて先行研究レビューを行い下記で示した結果を得ることにより,「MCB」,「MS」,「TP」,「BP」,「IN」の5因子からなる中心概念の仮説を導出することに至っている。

企業が顧客の利益を最優先に努めれば,顧客は信頼と永続的なロイヤルティによって報いてくれる(Antony, 2015)。Urban(2005b)は,「CAOは,顧客の利益を最大化し,顧客が最高の製品を見つけられるように,自社製品に限らず競合他社製品を薦めることさえある」と主張している。顧客は競合他社の製品内容と価格が比較できるようなオンラインツール,または従業員による他社も含めた推奨といった選択の透明性がCAO企業では達成されている(Lawer & Knox, 2006)。たとえ自社製品でなくても,顧客にとって最良の製品を見つけることができるように,企業は顧客にアドバイスする(Urban, 2005a)。航空機エンジンを提供する米General Electric:GE社は,「お客様のもとで,お客様のために」を掲げ,同時多発テロ後,経営に苦しむ航空会社を支援するため無償のコンサルテーションサービスを提供した(Urban, 2004)。このように,自社製品より他社製品の方が顧客に最適であれば他社製品を薦める,または,短期的には利益どころか費用の持ちだしとなる無償のサービスを提供するなど,企業利益は二の次に,まずは顧客利益を優先するマーケティング活動を行い,顧客からの強固な信頼を得ようとする戦略がCAOとなる。

Hoegl and Wagner(2005)は,企業と顧客との間の関係の質は,相互支援によって特徴づけられると指摘している。CAOに従って,企業は顧客を支援すれば(Wagner & Benoit, 2015),アドボケイトは信頼できる企業の代弁者となって,マーケティング活動の担い手となる(Christopher et al., 1991Seiling, 2008)。すなわち,企業が顧客を支援すれば,顧客は購買,製品の改善,顧客推奨により企業を支援するようになる(Urban, 2005b)。CAOでは,企業と顧客が相互支援するパートナーの関係にある(Lawer & Knox, 2006)。アドボケイトは,企業との価値共創プロセス7)に積極的に関与し,顧客参加を行うことにより,製品・サービスの品質向上に貢献する(Prahalad & Ramaswamy, 2004aYi & Gong, 2013Ngo & O’Cass, 2013)。CAOでは価値共創が,企業と顧客間の相互支援活動を実現するための手段となる(山岡,2010b)。さらに,CAOを推進する企業は,顧客参加型の製品・サービスの共同開発にも積極的である(Urban, 2004Antony, 2015)。

Prahalad and Ramaswamy(2004b)は,価値共創のための相互作用の構成要素の一つに透明性を挙げている。Eggert and Helm(2003)は,「透明性とは,意思疎通の過程で相手方の関係する行為や財産について知らされることに対する主観的感情」と定義した。多くの研究者が信頼関係について論じてきたが(Anderson & Weitz, 1989Morgan & Hunt, 1994Selnes, 1998Garbarino & Johnson, 1999),リレーションシップ・マーケティング研究において信頼と密接に関係しているにも関わらず(Hultman & Axelsson, 2007Murphy, Laczniak, & Wood, 2007),透明性の研究はあまりされてこなかった(Eggert & Helm, 2003)。Antony(2015, p. 725)は,「CAOを創造するために組織が考慮すべき重要な要素として,顧客に提供する情報の透明性が挙げられる」と指摘している。Urban(2005b, p. 18)は,「CAOの新しい哲学の1つが透明性である」と主張している。CAOを行うためには,企業は顧客に対して透明性を高め,正直に情報を公開しなければならない(Urban, 2004)。透明性は,CAOにおける戦略的な側面をもっている(Urban, Amyx, & Lorenzon, 2009)。Sawhney and Kotler(2001, p. 391)は,「マーケターは顧客に接する際の自分達の情報ポリシーを,不透明なものから透明なものに変更する必要がある。工業化時代のマーケターは,顧客が自分達の製品と競合他社のものを容易に比較できないように必要な情報を十分に開示しないことで成功をおさめてきた。情報化時代では隠す場所はなく,顧客の無知に乗じて利益を得ることは危険な手段である。賢明なマーケターは,誠実さの証として,自社の価格と共に競合他社の価格を公示しようとさえするであろう」と透明性の重要性を述べている。CAOでは,自社にとって不利益な情報であっても信頼を勝ち取るために情報を公開し(Urban, 2005bLeo & Russell-Bennett, 2014),自社と競合他社の製品・サービスと価格について,良い点と悪い点が客観的に比較でき評価できる仕組みを提供している(Lawer & Knox, 2006)。さらに,顧客がもつ知識は企業にとって顧客価値となっており(Kumar, 2013),CAO企業は,顧客からのフィードバック情報をインタラクティブに得て,公開し活用している(Yadav & Varadarajan, 2005Lawer & Knox, 2006)。

Murphy(1999, p. 113)は,「目的をもった正直さ」と誠実性を定義した。Morgan and Hunt(1994, p. 23)は,「パートナーが取引相手の信頼性と誠実性を固く信じるときに生じるもの」と信頼を定義している。信頼は関係性において鍵となる要素と位置づけられるので(Morgan & Hunt, 1994),誠実性は高品質な関係性を構築するための必要な次元と言える。Murphy et al.(2007)は,誠実性はリレーションシップ・マーケティングや関係性の質を前に進めるための構成要素になると指摘している。信頼は,アドボケイトを創造する上で重要な要素であるが,近年の研究では,誠実性は信頼の先行要因となることが実証されている(Schumann et al., 2010Sung & Kim, 2010Folse, Netemeyer, & Burton, 2012)。このことは,誠実性がCAOの中心概念になり得ることを示唆している。顧客に対して誠実な企業であるためには,顧客が求めるものに最適なものがなかったら,そのことを包み隠さず説明することがCAOの戦略である(Urban, 2005b)。CAO企業は,誠実に顧客利益を追求するので(Leo & Russell-Bennett, 2014),顧客にとって不用で不適切な販売は行うべきではない(Urban, 2005b)。公平な情報を集めたパワーを持った顧客に対しては強引な販売活動はできなくなっている。そして,カスタマーパワーが高まった現在では,顧客は真実を容易に見つけるため,顧客のニーズに合わない誇大宣伝は誠実性に欠ける行為であり,止めるべきである(Murphy, 1999Urban, 2005b)。

企業が業界トップの製品を持っていなかったら,自分達の製品を正直に顧客に薦めることはできないので,誠実な行動を取りづらくなるのである(Urban, 2004)。よって,最高の製品を提供することは,誠実に行動するための必要不可欠な要素となる。製品の品質は,顧客維持につながる顧客満足に多大な影響を与えることを多くの研究が指摘している(Anderson & Sullivan, 1993Bolton & Drew, 1991Boulding, Kalra, Staelin, & Zeithaml, 1993Oliver, 1999Rust, Inman, Jia, & Zahorik, 1999Gupta et al., 2006)。従って,企業はリレーションシップ・マーケティング戦略においても,高品質な製品を開発しようとする。ただ,CAOにおいては,顧客利益を第一に考える戦略となるので,企業は顧客にとって,最高の製品を提供することを目指す(Urban, 2004)。顧客のニーズに合い,顧客の期待を大幅に上回る最高の製品を他社に先駆けて提供する必要があるのである(Christopher et al., 1991Urban, 2005bRoy, 2015)。アドボケイトは,ロイヤルティをもつ企業から最良のオファーがあると期待しているため,企業はアドボケイトにとっての最高の製品を提供する必要がある。Antony(2015, p. 725)は,「CAOを創造するために組織が考慮すべき重要な要素として,顧客の信頼を得るための最高の品質の製品・サービスがある」と述べている。

CAOが達成されれば,アドボケイトと企業間には強固な信頼関係が確立される(Urban, 2004)。アドボカシー戦略の鍵は,企業が顧客視点から信用されうる存在になることである(Antony, 2015)。企業に対して顧客が持つ信頼は,アドボケイト行動を生み出すことにプラスの影響を与える(Gremler, Gwinner, & Brown, 2001)。Lawer and Knox(2006)は,「信頼とコミットメントの新たなレベルを獲得し,顧客との相互の透明性,対話,パートナーシップを構築することにより,より深い顧客との関係性を構築することをCAOは目指している。消費者の選択,関与,知識を新しく動員するために対応する先進的な市場志向である」とCAOを定義した。これまでの議論を踏まえ,本稿では,「企業が顧客利益の最大化を目指し,透明性を高め誠実に活動するために,顧客との相互支援活動を行い共に知識を高め,顧客にとって最高の製品を目指す。その結果,顧客との長期的な信頼関係を構築するための戦略志向」とCAOを定義する。

3  CAO尺度の開発8)

3.1  リサーチ・デザイン

前章の質的テキスト分析と先行研究レビューの成果を基に,25項目を設定し定量調査用の調査票を作成した(別表4)。意図した通りに回答されているか調査票の見直しを行うことを目的に,企業の経営管理を担う社長,役員,部長級以上の実務家を対象に事前調査(以下,事前調査1)を行った(2017年4月21日~2017年4月24日)。WEB調査形式で,106名から有効回答を得た。

さらに,事前調査1で得た知見を基に調査票を見直し,本調査を行う前に統計分析が可能なサンプル数を確保し最終的な調査設計を行うことを目的に,企業の経営管理を担う社長,役員,部長級以上の実務家を対象に2回目の事前調査(以下,事前調査2)を行った(2017年6月12日~2017年6月14日)。WEB調査形式で603名に配信し440名から有効回答を得た。事前調査2で取得したデータに関して,後述する尺度開発を行うための一連の統計分析を行い,本調査のための最終的な調査票を決定した。

本調査は,異なる回答者および異なる時期に2回行った。1回目の本調査(以下,調査1)は,企業の経営管理を担う社長,役員,部長級以上の実務家を対象に,WEB調査形式で行った(2017年8月10日~2017年8月14日)。1,777名に配信し,主要ビジネスが企業向けである企業(以下,B2B企業)に勤務する者:792名,主要ビジネスが一般消費者向けである企業(以下,B2C企業)に勤務する者:426名の計1,218名から有効回答を得た。同じ調査要領で2回目の本調査(以下,調査2)を実施した(2018年2月9日~2018年2月13日)。調査1とは異なる回答者にWEB調査形式で1,531名に配信し,B2B企業に勤務する者:793名,B2C企業に勤務する者:427名の計1,220名から有効回答を得た。

異なる条件下で収集されたデータを用いて定量調査を行った目的は,2つの本調査を定量分析することにより,不変性の確認を行うためである。事前調査,本調査のデータの収集は,株式会社インテージが保有するサンプルを対象に行った。データ分析については,「IBM SPSS Statistics 23」および「AMOS 23」を用いた。

3.2  尺度項目の整理

本調査となる調査1および調査2のデータを使用して,天井効果・フロア効果の確認を行った9)。調査1および調査2の25項目(別表4)について,天井効果およびフロア効果は認められなかった。またこれらの項目の中に,妥当性の低いデータしか測定できない項目が含まれている可能性がある。そのような項目を発見するため,探索的因子分析を用いた。斜交回転の一種であるプロマックス法により最尤法を用いて,次に行う確認的因子分析を行うための因子抽出を行った。斜交回転を行った理由は,因子間相互に一定の相関関係があると想定するためである。因子負荷量が.4以下のものを1つ削除した上で,探索的因子分析を逐次的に行うことを何度か繰り返すことにより,5因子15項目が抽出され満足のいく結果を得ることができた10)(表1)。これにより,CAOの5つの中心概念(因子)は15項目で示されることになった。

3.3  内部一貫性

信頼性とは,測定が常に一貫した結果を導くかどうか,つまり測定の安定性と一貫性の程度を表す。内部一貫性(信頼性)の確認にはクロンバックのα係数が.60以上であることが一般的に求められ,.70以上あることが望ましいとされる(Bagozzi, 1994Hair, Black, Babin, & Anderson, 2013)。そこで各項目群ごとにα係数を求めると,調査1および調査2のすべての項目において,.75以上を示しており,高い内部一貫性を確認できた(表1)。

3.4  1次元性と収束妥当性

この尺度単独でどの程度尺度の1次元性を保っているかをみる。尺度の1次元性は,Schermelleh-Engel, Moosbrugger, and Müller(2003)を参考に,GFI≧.90,AGFI≧.85,CFI≧.95,RMSEA≦.08を基準にした11)。確認的因子分析の結果,モデル適合度が示され尺度の1次元性が確認された(図1)。

図1.

尺度の1次元性と収束妥当性の確認

同一の構成概念を測定するために複数の質問項目を用いるとき,それらの項目得点間に,一貫した高い相関がみられることを収束妥当性という(Netemeyer, Bearden, & Sharma, 2003)。確認的因子分析において,構成概念とそれを構成する項目間の相関係数が十分に大きいことと(Steenkamp & van Trijp, 1991),因子負荷量がその標準誤差の2倍以上あること(Anderson & Gerbing, 1988)を基準に,尺度の収束妥当性については確認できた(図1,別表5)。

3.5  弁別妥当性

異なる構成概念間の測定結果についてしかるべき差異が認められなければならいことを弁別妥当性という(Hair, Hult, Ringle, & Sarstedt, 2016)。すなわち,MCB,MS,TP,IN,BPの5因子が明確に区別されることである。

弁別妥当性の確認にはいくつかの方法があるが,本研究では,Scheck and Kinicki(2000)を参考に,Sequential chi-square difference testを採用した。仮説モデルと仮説モデルより因子数が少ないモデルのχ2値を比較し,両モデル間のχ2値の差が統計的に有意かを確認する。考え得る全モデルについて調査1および調査2のデータを使って検証した結果12),弁別妥当性が確認された13)(表2)。また,全モデルの中で5因子モデルのχ2値が最も小さな値を示していることからも,5因子モデルが最適と判断する。

表2. Sequential chi-square difference test
調査1 調査2
χ2 d.f. χ2値の差 d.f.の差 差のp χ2 d.f. χ2値の差 d.f.の差 差のp
[5因子モデル]仮説モデル 709.298 85 557.767 85
[4因子モデル]
IN + TP 2198.876 86 1489.578 1 .000 2275.392 86 1717.625 1 .000
MCB + TP 1062.481 86 353.183 1 .000 1027.902 86 470.135 1 .000
BP + TP 2098.883 86 1389.585 1 .000 1982.497 86 1424.730 1 .000
MS + TP 1418.180 86 708.882 1 .000 1206.121 86 648.354 1 .000
MCB + IN 1880.540 86 1171.242 1 .000 1952.287 86 1394.520 1 .000
BP + IN 1982.125 86 1272.827 1 .000 2127.521 86 1569.754 1 .000
IN + MS 2561.283 86 1851.985 1 .000 2490.915 86 1933.148 1 .000
BP + MCB 1624.263 86 914.965 1 .000 1527.544 86 969.777 1 .000
MCB + MS 1235.583 86 526.285 1 .000 940.460 86 382.693 1 .000
BP + MS 1975.483 86 1266.185 1 .000 1697.421 86 1139.654 1 .000
[3因子モデル]
IN + TP + MCB 2453.306 87 1744.008 2 .000 2680.169 87 2122.402 2 .000
IN + TP + BP 3290.811 87 2581.513 2 .000 3395.447 87 2837.680 2 .000
IN + TP + MS 3020.307 87 2311.009 2 .000 3038.574 87 2480.807 2 .000
TP + MCB + BP 2453.436 87 1744.138 2 .000 2244.947 87 1687.180 2 .000
TP + MCB + MS 1571.797 87 862.499 2 .000 1390.654 87 832.887 2 .000
TP + BP + MS 2913.675 87 2204.377 2 .000 2513.013 87 1955.246 2 .000
MCB + BP + MS 2535.156 87 1825.858 2 .000 2095.383 87 1537.616 2 .000
MCB + MS + IN 2755.934 87 2046.636 2 .000 2673.212 87 2115.445 2 .000
MCB + BP + IN 2803.733 87 2094.435 2 .000 2936.578 87 2378.811 2 .000
BP + MS + IN 3317.418 87 2608.120 2 .000 3289.051 87 2731.284 2 .000
IN + TP MCB + BP 3047.368 87 2338.070 2 .000 3129.505 87 2571.738 2 .000
MCB + TP BP + MS 2288.540 87 1579.242 2 .000 2138.494 87 1580.727 2 .000
BP + TP IN + MCB 3132.920 87 2423.622 2 .000 3265.080 87 2707.313 2 .000
MS + TP IN + MCB 2535.933 87 1826.635 2 .000 2547.495 87 1989.728 2 .000
BP + IN TP + MCB 2340.122 87 1630.824 2 .000 2596.376 87 2038.609 2 .000
IN + MS TP + MCB 2885.857 87 2176.559 2 .000 2936.112 87 2378.345 2 .000
BP + MCB TP + MS 2248.654 87 1539.356 2 .000 2117.571 87 1559.804 2 .000
MCB + MS TP + BP 2527.676 87 1818.378 2 .000 2302.893 87 1745.126 2 .000
IN + TP MCB + MS 2728.195 87 2018.897 2 .000 2614.252 87 2056.485 2 .000
BP + TP IN + MS 3955.680 87 3246.382 2 .000 3897.094 87 3339.327 2 .000
MS + TP IN + BP 2700.600 87 1991.302 2 .000 2783.934 87 2226.167 2 .000
BP + MS TP + IN 3423.068 87 2713.770 2 .000 3345.804 87 2788.037 2 .000
BP + MCB MS + IN 3469.130 87 2759.832 2 .000 3341.596 87 1944.577 2 .000
MCB + MS BP + IN 2487.950 87 1778.652 2 .000 2502.344 87 #REF! 2 .000
BP + MS MCB + IN 3062.832 87 2353.534 2 .000 2995.162 87 2437.395 2 .000
[2因子モデル]
MCB + BP + MS IN + TP 3981.153 89 3271.855 4 .000 3765.615 89 3207.848 4 .000
IN + BP + MS MCB + TP 3677.812 89 2968.514 4 .000 3753.452 89 3195.685 4 .000
IN + MCB + MS BP + TP 4181.338 89 3472.040 4 .000 4105.913 89 3548.146 4 .000
IN + MCB + BP MS + TP 3531.437 89 2822.139 4 .000 3599.862 89 3042.095 4 .000
TP + BP + MS MCB + IN 4026.551 89 3317.253 4 .000 3884.908 89 3327.141 4 .000
TP + MS + MCB BP + IN 2947.034 89 2237.736 4 .000 3035.171 89 2477.404 4 .000
TP + BP + MCB IN + MS 4396.920 89 3687.622 4 .000 4235.925 89 3678.158 4 .000
TP + MS + IN BP + MCB 3968.177 89 3258.879 4 .000 4018.650 89 3460.883 4 .000
TP + IN + BP MCB + MS 3803.110 89 3093.812 4 .000 3783.196 89 3225.429 4 .000
TP + IN + MCB BP + MS 3691.304 89 2982.006 4 .000 3783.729 89 3225.962 4 .000
IN + TP + MCB + BP 3732.951 89 3023.653 4 .000 3809.704 89 3251.937 4 .000
IN + TP + MCB + MS 3200.780 89 2491.482 4 .000 3225.624 89 2667.857 4 .000
TP + MCB + BP + MS 3169.730 89 2460.432 4 .000 2736.018 89 2178.251 4 .000
MCB + BP + MS + IN 3859.452 89 3150.154 4 .000 3698.716 89 3140.949 4 .000
BP + MS + IN + TP 4252.029 89 3542.731 4 .000 4141.690 89 3583.923 4 .000
[1因子モデル]
IN + TP + MCB + BP + MS 4519.110 90 3809.812 5 .000 4373.497 90 3815.730 5 .000

4  不変性の確認

4.1  リサーチ・デザイン

これまでの分析によって,異なる条件下で収集されたデータにおいて高い構成概念妥当性を示すことが確認できた。しかし,異なる集団間でのCAO尺度を比較分析するためにはさらなる検討が必要である。なぜなら,異なる集団間で測定結果を比較するためには,異なる集団間で因子モデルの基本的な構造が等しくなければならないからである。よって,因子モデルの構造の等質性を検討するためには,まず,母集団間で各因子を測定する観測変数が等しいかを調べる。これが等しいとき,配置不変性が成立するという。配置不変性モデルが認められれば,次は,母集団間で各因子を測定する因子パターンが全て等しいかを調べる。この因子パターンが全て等しければ,測定不変性が成立するという。測定不変性が成立したときに初めて,母集団間で因子平均に差があることを検討することが可能となる(狩野・三浦,2002,p. 188;豊田,2009,p. 250)。

まず,調査1および調査2における因子モデルの配置不変性と測定不変性を調べる。調査1と調査2のデータに同じ因子分析モデルを適用した配置不変モデルを作成し,同時に推定を行う。この配置不変モデルの適合度指標が満足できる値であれば,配置不変性は確認されたことになる(豊田,2003,p. 186;豊田,2007,p. 84–85)。次に,配置不変モデルを基に,各因子を測定するパスに等値制約をおいた測定不変モデルを用意する。そして,この測定不変モデルと配置不変モデルを同時に推定し,両者間の適合度指数を比較検討する(豊田,2003,p. 56–57;豊田,2007,p. 86–87)。本研究では,測定指標と1次因子の間に存在する15のパス(図2におけるa~o)および,1次因子と2次因子間に存在する5つのパス(図2におけるp~t)に等値制約をおいた(a1 = a2, b1 = b2, c1 = c2, d1 = d2, e1 = e2……)モデルを測定不変モデル(図2)として使用する。

図2.

測定不変モデル

両調査間に不変性が確認できれば,調査1と調査2のデータを統合し,このデータを用いて,様々な企業カテゴリー間における不変性を検討する。データを統合する目的は,十分なサンプルをもって分析するためである。特に,業界別の不変性確認時は,業界を4つのカテゴリーに分類するため,サンプル数が少なくなる。調査データの統合により十分なサンプル数を確保することができる。

4.2  調査1と調査2の不変性

調査1および調査2における配置不変モデルを分析した結果,GFI = .934,AGFI = .906,CFI = .958,RMSEA = .051と満足のいく適合度が示されたため,調査1と調査2の間に配置不変性が確認された。次に等値制約をおいた測定不変モデルと配置不変モデルの比較について,RMSEA,AIC,BCCを用いる(豊田,2007,p. 87)。RMSEAは,構造方程式モデリングにおいてよく利用され,最も信頼のおける指標の一つであり(豊田,2009),AICおよびBCCは複数のモデルを比較して,どちらのモデルの方が適合が良いかを比較するための指標であり,値が小さいほど適合が良いと判断する(豊田,2003)。適合度はいずれも測定不変モデルの方が配置不変モデルの数値より小さな値となっており,測定不変性が確認された(表3)。よって,調査1と調査2の間において因子パターンが全て等しいことが確認された。

表3. 調査1と調査2の高次因子モデル
d.f. GFI AGFI CFI RMSEA AIC BCC
配置不変モデル 170 .934 .906 .958 .051 1407.065 1408.929
測定不変モデル 184 .933 .912 .958 .050 1394.524 1396.015

4.3  企業カテゴリー間の不変性

様々な企業カテゴリー間での不変性の検討を行う。B2B企業カテゴリーとB2C企業カテゴリー間14)において不変性の検討を行った。配置不変性については,GFI = .928,AGFI = .898,CFI = .954,RMSEA = .054と満足のいく適合度が示され,配置不変性が確認された。次に,配置不変モデルと測定不変モデルのRMSEA,AIC,BCCを比較すると,全ての数値において,測定不変モデルの数値が小さいため,測定不変性が確認された(表4)。すなわち,B2B企業とB2C企業カテゴリーの違いによる因子パターンの違いは認められなかった。よって,主要ビジネスが企業向けの企業と主要ビジネスが一般消費者向けの企業同士で,CAO尺度による比較ができることが明らかとなった。

表4. 企業カテゴリー間の不変性
d.f. GFI AGFI CFI RMSEA AIC BCC
[企業ビジネス向けビジネスと一般消費者向けビジネス]
配置不変モデル 170 .928 .898 .954 .054 1521.840 1523.906
測定不変モデル 184 .926 .904 .954 .052 1517.805 1519.458
[商品のモノとサービス]
配置不変モデル 170 .927 .897 .954 .054 1419.838 1421.866
測定不変モデル 184 .926 .903 .953 .052 1409.728 1411.350
[売上規模]
配置不変モデル 170 .928 .899 .954 .054 1521.245 1523.927
測定不変モデル 184 .927 .905 .953 .052 1518.575 1520.720
[従業員規模]
配置不変モデル 170 .930 .901 .955 .053 1480.509 1483.006
測定不変モデル 184 .929 .907 .955 .051 1477.833 1479.831
[業界]
配置不変モデル 340 .914 .879 .949 .040 1956.533 1964.138
測定不変モデル 382 .911 .888 .948 .038 1941.362 1946.685

同じ要領で,主要商品がモノである企業カテゴリーと主要商品がサービスである企業カテゴリー間15)においても配置不変性が確認され,RMSEA,AIC,BCCを比較することにより,測定不変性が確認された(表4)。よって,主要商品がモノを扱う企業と主要商品がサービスを扱う企業同士で,CAO尺度による比較ができることが明らかとなった。次に,売上規模および従業員規模16)についても,配置不変性および測定不変性を確認できた(表4)。よって,売上規模が異なる企業同士,従業員規模が異なる企業同士においても,CAO尺度による比較ができることが明らかとなった。最後に,業界による企業カテゴリー間において,不変性の確認を行った。業界においては,4つのカテゴリーにグループ化17)し,不変性の確認を行った。すなわち,測定指標と1次因子の間に存在する15のパスと1次因子と2次因子間に存在する5つのパスに対しては,4つのグループ間のパスに等値制約をおいた(a1 = a2 = a3 = a4, b1 = b2 = b3 = b4, c1 = c2 = c3 = c4, d1 = d2 = d3 = d4, e1 = e2 = e3 = e4……)。その結果,配置不変性および測定不変性を確認できた(表4)。よって,異なる業界間においても,CAO尺度による比較ができることが明らかとなった。

5  本研究の意義と課題

慎重に先行研究レビューを行い,十分なサンプル数をもったインタビュー調査から得たデータを使って質的テキスト分析行い,注意深く中心概念と項目の抽出を行った。2回の事前調査において実証分析を行い,質問票の精査を十分に行った。そして,異なる時期に実施した2回の本調査から内部一貫性,1次元性,収束妥当性,弁別妥当性について検討した結果,CAOの尺度を構築することができ,5因子15項目で測定できることが明らかとなった。大規模サンプルによる2回の調査から得たデータを使用し,多母集団の不変性の確認を行い,様々な企業カテゴリー間で使用できる汎用性と頑健性の高い尺度を構築することができた。特に整理した15項目については,これまでの研究蓄積を反映し,質的テキスト分析,文献レビューと2度の事前調査から精査したものを実証分析で確認しているため,精度の高いものに仕上がっている。そして,CAOとは,どのような概念でどのように定義すべきか,その指針となるものになっている。

実務への貢献は,この尺度を使用して現代版顧客志向と言われる,CAO度を測ることができるようになることである。さらに,様々な企業カテゴリーを対象とすることができる。一般的に企業文化や戦略が異なると言われている,B2B企業とB2C企業,製造業とサービス業,売上・従業員規模が異なる企業,異なる業界に属する企業間といった様々な企業カテゴリーに対して,同じ尺度で測ることができる。また,デジタル技術の急速な発展により,透明性の高いマーケティング活動が効果的となっており,CAOの重要性は益々増している。企業がCAOを目指す場合,どのような要素が満たされていて,どのような要素が足りないかを中心概念の項目により把握することができ,CAOを推進する企業の助けとなることが期待される。

さらに,これらの項目を基に考えれば,CAOに取り組むためには,どのような具体的な企業活動を行えば良いかが分かる。例えば,スーパーのオーケーは,オネスト(正直)カードと呼ばれるポップを陳列商品の前に設置して,透明性の高い活動を行っている。「只今販売しておりますグレープフルーツは,南アフリカ産で酸味が強い品種です。フロリダ産の美味しいグレープフルーツは12月に入荷予定です18)」といった内容のカードが商品前に置かれている。このカードは,販促どころか対象商品の販売抑制に寄与する内容である。これは,項目TP03の「自社にとって不利益な情報であっても,顧客へ積極的に情報を公開している」にあたる活動と言える。

また他の例を挙げると,オンライン靴販売の米ザッポス・ドットコムは,顧客サービスを最優先に考えた活動を行っている。通常,オンライン販売の電話オペレーターは,できるだけ短い時間で処理することが求められる。なぜなら,電話オペレーター業務は費用に位置づけられるからだ。一方,ザッポスのコール・センターの場合は,顧客との電話対応にかかるお金は,マーケティング投資であり削減すべき支出ではないとして,快く顧客対応することをポリシーに24時間年中無休で常駐している。そのため,6時間顧客との話しに付き合ったオペレーターや,深夜にホテル近くで食事がとれる店を聞かれ,デリバリー・ピザ店を5軒紹介したオペレーターは,顧客サービスの手本として社内から賞賛される(Hsieh, 2010)。ザッポスの特徴的なサービスである1年間返品可能,返送料無料といった制度にも,企業利益より顧客利益を優先する考え方が反映している。これは,項目MCB01の「自社の利益より,顧客の利益を優先している」にあたる活動と言える。このように,企業はこの項目を使って,具体的なCAOを推進するための活動を考えることができるのである。

これらの貢献の一方で課題もある。第一に,今回の研究では日本企業を対象にデータ取得を行っているため,文化や制度面など様々な要素で日本企業とは異なる海外企業のデータを使った尺度開発は検討課題と言える。

第二に,CAOモデルの構築ができると,CAOを生み出す先行要因とCAOによってもたらされる成果の分析が可能となる。CAOを進めるために最適な企業環境を把握できれば,効率的にCAOを進めることが可能となる。一方,CAOを進めることにより得られる具体的な効果が分かれば,費用対効果の把握や企業が目指すべき道の指針となる。

第三に,デジタル時代のマーケティング活用が期待される,一般消費者サイドのアドボケイトがどのように創出されるのか,その消費者行動のメカニズムを解明することも必要である。これまでの研究において,「感情的コミットメント」,「満足」,「信頼」がアドボケイトに正の影響を及ぼしていることが示されている(Fullerton, 2011Hsiao, Shen, & Chao, 2015Shukla et al., 2016)が,先行研究では,このような単純なモデル化に止まっており,実証的な分析もほとんど進んでいないのが現状である。

最後に,この一般消費者サイドのアドボケイトモデルと,本研究で開発した企業戦略としてのCAO尺度とを連動したモデルを構築できれば,マーケティング戦略と消費者行動研究をつなぐ成果となり,顧客マネジメント分野の進展に寄与することができると考える。

別表1. テキストマイニング結果
出現数 出現率
顧客 40 11.1%
企業 13 3.6%
サービス 8 2.2%
利益 7 1.9%
提供 7 1.9%
ユーザー 5 1.4%
情報 5 1.4%
大事 4 1.1%
仕事 4 1.1%
支援 4 1.1%
アドボケイト 4 1.1%
長期 4 1.1%
パートナー 3 0.8%
相手 3 0.8%
意見 3 0.8%
誠実 3 0.8%
活動 3 0.8%
製品 3 0.8%
お客様 3 0.8%
我々 3 0.8%
品質 3 0.8%
直接 3 0.8%
最大 3 0.8%
立場 3 0.8%
感動 3 0.8%
環境 3 0.8%
自分たち 3 0.8%
判断 3 0.8%
紹介 3 0.8%
提案 3 0.8%
別表2. 顧客志向尺度の先行研究
研究者 手法 構成する項目
Narver and Slater(1990) 実証研究 1.企業は,顧客ニーズに応えることへのコミットメントと志向の水準を常に観察している
2.企業の事業戦略は,いかにして顧客にもっと大きな価値を生み出すことができるかについての我々の信念によって推進される
3.競争優位のための企業の戦略は,顧客ニーズの理解に基づいている
4.企業の目標は,顧客満足を第一に推進される
5.企業は,顧客満足を体系的かつ頻繁に測定している
6.企業は,販売後のサービスに細心の注意を払っている
Kohli et al.(1993) 実証研究 1.市場情報の生成(項目を中分類化したもの)
2.市場情報の普及(項目を中分類化したもの)
3.市場情報の反応(項目を中分類化したもの)
Nasution and Mavondo(2008) 実証研究 1.企業は,顧客ニーズに対応する従業員コミットメントの程度を常に監視している
2.企業戦略は,顧客価値を創造するための必要性によって推進される
3.顧客ニーズを理解することが,企業の競争優位をもたらすと信じている
4.企業の目的は,高い顧客満足を達成するための必要性によってもたらされる
別表3. CAOの中心概念に関する先行研究
研究者 手法 構成する項目 該当する
中心概念
Urban(2005a) 理論研究 1.企業は,顧客にとっての最高の製品を提供する BP
2.企業は,顧客からの信頼を得るために誠実な行動をとる IN
3.企業は,顧客の購買を助けるために透明性の高い情報を提供する TP
4.企業は,顧客をパートナーと位置づけ相互支援を行う MS
5.企業は,顧客利益を追求する MCB
Lawer and Knox(2006) 理論研究 1.企業は,顧客の成功を重視する MCB
2.企業は,顧客の製品体験から得られる価値を最大化する BP
3.企業は,顧客と共にマーケティング文脈を進化させる MS
4.企業は,顧客をパートナーとして位置づけ知識を共有する MS
5.企業は,顧客にとってのベストなものを喜んで提供しようとする MCB
6.企業は,透明性を高め顧客が選択しやすい環境をつくる TP
Roy and Eshghi(2013) 実証研究 1.企業は,顧客利益の最大化を追求する MCB
2.企業は,顧客を全体的に公正に扱う IN
3.企業は,顧客を礼節と敬意をもって扱う IN
Roy(2013)Roy(2015) 実証研究 1.企業は,顧客が製品やサービスを選択する時の手助けとなる公平なアドバイスを行う(Roy, 2013Roy, 2015 MCB
2.企業は,自社と競合の製品とサービスに関する正直で公開された情報とアドバイスを提供する(Roy, 2013Roy, 2015 IN/TP
3.企業は,顧客の利益の最大化を念頭においている(Roy, 2013Roy, 2015 MCB
4.企業は,顧客の擁護し支援する(Roy, 2013 MS
Antony(2015) 理論研究 1.企業は,顧客に提供する情報の透明性を高める MCB
2.企業は,顧客の信頼を得るために最高の製品・サービスを提供する BP
3.企業は,顧客と共同作業を行う MS
4.企業は,品質の高いサプライチェーンを構築する BP
Wagner and Benoit(2015) 実証研究 1.企業は,顧客の利益になるように措置を講じる MCB
2.企業は,顧客を擁護し支援する MS
3.企業は,顧客の熱心な支持者である MS
Yeh(2013)Yeh(2016) 実証研究 1.企業は,完全な公開情報を顧客に提供する(Yeh, 2013Yeh, 2016 TP
2.企業は,様々な製品・サービスの使用経験に関する情報を顧客に共有することができる(Yeh, 2013Yeh, 2016 TP
3a.企業は,正直に顧客の利益最大化を試みる(Yeh, 2013 IN/MCB
3b.企業は,顧客の利益最大化を企てる(Yeh, 2016 MCB
4.企業は,顧客が自らを助ける支援をする(Yeh, 2013Yeh, 2016 MS
5.企業は,顧客が問題解決できるツールを顧客に提供する(Yeh, 2013Yeh, 2016 MS
6.企業は,顧客が様々な選択肢から容易に選択できるように情報提供する(Yeh, 2013Yeh, 2016 TP
7.企業は,サービスの効率性を高める努力をしている(Yeh, 2016 BP
別表4. 調査項目の整理
因子 CAO尺度 項目 先行研究 質的テキスト分析
IN01 採用 貴社は,顧客にとって,不適切な販売活動は行わない。 Urban(2005b)
IN02 採用 貴社は,顧客に対して,常に誠実な対応をとることを優先している。 Leo and Russell-Bennett(2014)
IN03 採用 貴社は,顧客にとって,不要な販売活動は行わない。 Urban(2005b)
IN04 不採用 貴社は,顧客の要求に対してできない部分は明言し,できる範囲で最大限の努力をしている。 Urban(2005b)
IN05 不採用 貴社は,誇大な表現は避け,真実を伝える広告・宣伝活動を行っている。 Murphy(1999)Urban(2005b)
BP01 採用 貴社は,競合他社と比べ,どこよりも価値ある製品・サービスを,提供するようにしている。 Urban(2004)
BP02 採用 貴社は,競合他社と比べ,最高の品質の製品・サービスを,開発することに対して積極的である。 Antony(2015)
BP03 採用 貴社は,顧客の期待を大幅に上回る製品・サービスを提供することを,常に心がけている。 Christopher et al.(1991)Urban(2005b)Roy(2015)
BP04 不採用 貴社は,顧客のニーズに合った最高の製品・サービスを,他社に先駆けて提供するようにしている。 Roy(2015)
BP05 不採用 貴社は,競合他社の情報も含めた市場データを活用して,新しい市場を生み出す製品・サービスを提供している。 Urban(2005b)
MS01 採用 貴社は,顧客と企業が,共に価値を創り上げる考え方を取り入れた活動を行っている。 Yi and Gong(2013)
MS02 採用 貴社は,顧客をパートナーとして位置づけている。 Lawer and Knox(2006)Urban(2005b)
MS03 採用 貴社は,顧客参加型で,製品・サービスを共同開発する取り組みに積極的である。 Antony(2015)Ngo and O’Cass(2013)Urban(2004)
MS04 不採用 貴社は,顧客を支援する活動を行っている。 Yeh(2016)*,Wagner and Benoit(2015)
MS05 不採用 貴社は,従業員に代わって,顧客に企業活動を担ってもらう発想で活動している。 Seiling(2008)Christopher et al.(1991)
TP01 採用 貴社は,自社と他社の製品・サービスに関して,良い点と悪い点が比較できる情報を提供している。 Roy(2015)*,Lawer & Knox(2006)Sawhney and Kotler(2001)
TP02 採用 貴社は,自社と他社の製品・サービスに関して,客観的に評価ができる仕組みを顧客に提供している。 Roy(2015)*,Lawer & Knox(2006)Urban(2004)
TP03 採用 貴社は,自社にとって不利益な情報であっても,顧客へ積極的に情報を公開している。 Leo and Russell-Bennett(2014)Urban(2005b)
TP04 不採用 貴社は,自社のありのままの情報を,顧客に提供することを心がけている。 Yeh(2016)*,Urban(2004)
TP05 不採用 貴社は,顧客があげた声の情報を,全て公開している。 Yeh(2016)*,Yadav and Varadarajan(2005)Lawer and Knox(2006)
MCB01 採用 貴社は,自社の利益より,顧客の利益を優先している。 Urban(2005b)
MCB02 採用 貴社は,常に顧客の利益が最大化することを第一に考えている。 Yeh(2016)*,Roy(2015)*,Urban(2005b)
MCB03 採用 貴社は,自社より他社の製品・サービスの方が,顧客の利益につながる時は,他社の製品・サービスを薦める。 Urban(2005b)
MCB04 不採用 貴社は,自社と他社の製品・サービスについて,顧客にとって公平なアドバイスを行っている。 Roy(2015)*,Lawer and Knox(2006)Urban(2005a)
MCB05 不採用 貴社は,顧客に対して無償のサービスを行っている。 Urban(2004)

注)先行研究欄に*で記したものは先行研究のCAO尺度項目を参考とした。具体的な尺度項目は別表3に示す。

別表5. 標準化係数と標準誤差
調査1 標準化係数 標準誤差 確率 調査2 標準化係数 標準誤差 確率
IN <--- CAO .645 .023 .001 IN <--- CAO .625 .023 .001
BP <--- CAO .773 .017 .001 BP <--- CAO .751 .017 .001
MS <--- CAO .807 .016 .001 MS <--- CAO .848 .014 .001
TP <--- CAO .830 .016 .001 TP <--- CAO .809 .016 .001
MCB <--- CAO .896 .014 .001 MCB <--- CAO .918 .012 .001
IN01 <--- IN .876 .009 .001 IN01 <--- IN .882 .009 .001
IN02 <--- IN .905 .009 .001 IN02 <--- IN .908 .008 .001
IN03 <--- IN .795 .012 .001 IN03 <--- IN .849 .010 .001
BP01 <--- BP .906 .007 .001 BP01 <--- BP .887 .009 .001
BP02 <--- BP .901 .007 .001 BP02 <--- BP .873 .009 .001
BP03 <--- BP .904 .007 .001 BP03 <--- BP .880 .009 .001
MS01 <--- MS .910 .009 .001 MS01 <--- MS .883 .010 .001
MS02 <--- MS .825 .011 .001 MS02 <--- MS .827 .012 .001
MS03 <--- MS .769 .014 .001 MS03 <--- MS .741 .015 .001
TP01 <--- TP .880 .010 .001 TP01 <--- TP .865 .010 .001
TP02 <--- TP .855 .011 .001 TP02 <--- TP .848 .011 .001
TP03 <--- TP .746 .016 .001 TP03 <--- TP .781 .014 .001
MCB01 <--- MCB .789 .014 .001 MCB01 <--- MCB .783 .014 .001
MCB02 <--- MCB .842 .013 .001 MCB02 <--- MCB .854 .012 .001
MCB03 <--- MCB .638 .020 .001 MCB03 <--- MCB .697 .017 .001

注)ブートストラップ法(B=2,000)により標準化係数および標準誤差の推定値を取得した

別表6. 本調査データの度数分布表
調査1 調査2
[従業員規模] 度数 % 度数 %
1–299人 917 75.3 894 73.3
300–999人 101 8.3 105 8.6
1,000–4,999人 89 7.3 111 9.1
5,000–9,999人 32 2.6 25 2.0
10,000人以上 79 6.5 85 7.0
[売上規模]
1億円未満 432 35.5 430 35.2
1–99億円 512 42.0 495 40.6
100–299億円 62 5.1 65 5.3
300–999億円 72 5.9 72 5.9
1,000–2,999億円 40 3.3 42 3.4
3,000–9,999億円 43 3.5 52 4.3
1兆円以上 57 4.7 64 5.2
[業界]
製造 234 19.2 246 20.2
金融サービス 79 6.5 96 7.9
流通・小売 191 15.7 185 15.2
情報・通信 99 8.1 92 7.5
サービス 281 23.1 256 21.0
医療・福祉 54 4.4 60 4.9
運輸・旅行 61 5.0 57 4.7
その他 219 18.0 228 18.7

謝辞

本論文の執筆にあたり,アリアエディターと二人の査読の先生方から多くの大変有益なコメントを頂きました。深く感謝致します。なお,本研究は,JSPS科研費JP15K03750の助成を受けたものです。

1)  ABI/INFORM Completeを使用して,「customer」および「advocacy」の両方のキーワードを含む文献数を算出したところ,1980年~1989年:339件,1990年~1999年:5,765件,2000年~2009年:28,813件,2010年~2018年:68,259件と年々右肩上がりで増加傾向にある。学術誌に限定して検索してみても,1980年~1989年:100件,1990年~1999年:1,251件,2000年~2009年:3,581件,2010年~2018年:4,761件と右肩上がりで増加傾向にある。直近5年間の推移をみても,2014年:513件,2015年:545件,2016年:577件,2017年:583件,2018年:589件と年々増加傾向にある。

2)  質的テキスト分析を参考にした項目については,別表4に○印で示した。

3)  先行研究レビューと調査項目の関係は,別表4に示した。

4)  リレーションシップ・マーケティングとカスタマー・アドボカシーとの関連性に関する分析は,山岡(2015)に詳しい。

5)  顧客志向研究におけるカスタマー・アドボカシーの位置づけに関する整理は,山岡(2011)に詳しい。

6)  別表2に,Narver and Slater(1990)の具体的な尺度項目を示す。

7)  カスタマー・アドボカシーと価値共創との関係性に関する理論的な整理は,山岡(2010b)に詳しい。

8)  尺度開発手順については,Netemeyer et al.(2003)Ramani and Kumar(2008)久保田(2010)を参考にした。

9)  天井効果は平均+標準偏差が取り得る値以上,フロア効果は平均-標準偏差が取り得る値以下を示すことである。本研究の調査では,7件法を採用しているため,天井効果は平均+標準偏差が「7」より大きい場合,フロア効果は平均-標準偏差が「1」より小さい場合に当てはまる。

10)  探索的因子分析は因子数(5)を指定して行い,調査1と調査2の項目で因子負荷量は.500以上のものがほとんどで,最も低い項目で.428であり,想定した要素毎に分類された。信頼性係数も高い値を示していることから,確認的因子分析の検証を行うことにした。

11)  GFI(Goodness of Fit Index):モデルがデータの分散共分散行列をどの程度再現できているかを指標化したもの。値の上限は1.0であり,これに近いほど説明率が高い。AGFI(Adjusted Goodness of Fit Index):GFIは推定される母数が多い(自由度が小さい)と無条件に値が大きくなる傾向があるので,このバイアス修正をするためにGFIに対して自由度による補正を加えたもの。CFI(Comparative Fit Index):独立モデルと分析モデル双方の自由度を考慮した上で乖離度の比較を行う指標で,1.0に近いほど適合が良いと判断する。RMSEA(Root Mean Square Error of Approximation):1自由度あたりの乖離度の大きさを評価する指標。極力,モデルの複雑さの影響を取り除いた形で乖離度の大きさを捉えるため,近年広く利用されるようになった。値は,.0に近いほど適合が良いと考える(豊田,2003)。

12)  2次因子を取り除いた1次因子のみの1次因子間の相関をおいたモデルで分析を行った。

13)  5つの因子間の相関係数の2乗が各因子のAverage Variance Extracted:AVEを超えないことが確認できたことからも尺度の弁別妥当性が確認されている。

14)  対企業向けビジネスが50%以上の企業カテゴリーと対一般消費者向けビジネスが50%以上の企業カテゴリー間において,不変性の検討を行った。

15)  主要商品の50%以上がモノ(有形)を扱う企業カテゴリーと主要商品の50%以上がサービス(無形)を扱う企業カテゴリー間において,不変性の検討を行った。

16)  売上規模が99億円未満の企業カテゴリーと100億円以上の企業カテゴリー間において,不変性の確認を行った。また,従業員規模は299人未満の企業カテゴリーと300人以上の企業カテゴリー間において,不変性の検討を行った。データの度数分布は別表6参照。

17)  製造・金融サービスの企業カテゴリー,流通・小売・情報・通信の企業カテゴリー,医療・福祉・サービスの企業カテゴリー,運輸・旅行・その他の企業カテゴリー間において,不変性の検討を行った。データの度数分布は別表6参照。

18)  オーケー株式会社ホームページ,https://ok-corporation.jp/feature/feature-05/(参照2018年8月28日)。

参考文献
 
© 2020 日本商業学会
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