流通研究
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一般論文
ポイント制と消費者厚生
山下 貴子成生 達彦
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2025 年 27 巻 4 号 p. 37-48

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抄録

小売企業は,ポイントを利用しない消費者には表示価格で販売し,ポイントを利用する消費者には実質的に低い価格で販売している。つまりポイント制は第3級の価格差別である。また小売企業はポイントを付与する販売額の一定割合の手数料を支払っている。この手数料は売上税と同等の効果を持つ。それゆえポイント制導入の効果は価格差別効果と手数料効果を併せたものとなる。価格差別効果では,ポイント利用者の消費者余剰が増えて,ポイントを利用しない消費者の余剰は減る。また小売企業の総利潤は増えるが,総消費者余剰は減る。手数料効果では,ポイント利用者の実質価格が上がり,彼らの厚生水準を低下させると同時に,小売企業の利潤を減少させる。これら2つの効果を踏まえればポイントを利用しない消費者の厚生および総消費者余剰は減少する。また,ポイント利用者の割合が高くかつ手数料が高い場合には,すべての消費者の厚生が悪化する可能性がある。

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