流通研究
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マーケティングにおけるポストモダン・アプローチ再考
駒田 純久
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2004 年 7 巻 1 号 p. 15-31

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抄録
1980年代以降、マーケティング研究において提唱されはじめたポストモダン・アプローチは、いつしか解釈主義的アプローチと同じ意味で用いられるようになり、また反一実証主義的なものと見なされるようになった。そのためポストモダン・アプローチは相対主義的な傾向が強調され、往々にしてポストモダニズムに依拠した反一科学、反一近代合理主義の側面が強調されることになる。しかし、そのような理解こそがポストモダン・アプローチに対する誤解を生じるとともに、解釈主義的アプローチをはじめとする新たなアプローチの可能性を狭めてきたともいえる。解釈主義的アプローチだけがポストモダン・アプローチでないし、反一実証主義的なアプローチだけがポストモダン・アプローチではない。そもそも「ポストモダン・アプローチ」という特別なアプローチなど存在しない。あるのはポストモダンの社会を探究するための多様なアプローチだけであり、それにはこれまでの伝統的なアプローチも含まれる。
本稿は「ポストモダン・アプローチ」という言葉がマーケティング研究の中で用いられるようになった背景をたどり、「解釈主義的アプローチ」に代表される新たな試みに対して歪曲された理解が共有されるに至った経緯を検討していく。その目的は真の意味でマーケティングにおける「解釈主義的アプローチ」の必要性と新たな方向性を見出そうとすることであり、反-実証主義を標榜する「ポストモダニズム」という桎梏から「ポストモダン・アプローチ」を解き放すことでもある。
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