流通研究
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7 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 松井 剛
    2004 年 7 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は、1990年代半ば以降、「癒し」を訴求する製品やサービスを、様々な業界に属する多数の企業が提供した理由を明らかにすることにある。このプロセスを明らかにするために、本論文では、「癒し」関連の新聞記事 (1,162件) を活用して、企業行動とこれに対するマスコミの解釈を詳細に分析した。このブームが生じた理由として通常、「癒し」ニーズの増大が理由として挙げられるが、本論文が注目するのは「癒し」の認知的制度化が組織フィールドにおいて成立したことである。つまり、「癒し」訴求製品がヒットし、多数の模倣者が出現することによって、この種の製品を提供することの正統性が高められたのである。
  • 駒田 純久
    2004 年 7 巻 1 号 p. 15-31
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    1980年代以降、マーケティング研究において提唱されはじめたポストモダン・アプローチは、いつしか解釈主義的アプローチと同じ意味で用いられるようになり、また反一実証主義的なものと見なされるようになった。そのためポストモダン・アプローチは相対主義的な傾向が強調され、往々にしてポストモダニズムに依拠した反一科学、反一近代合理主義の側面が強調されることになる。しかし、そのような理解こそがポストモダン・アプローチに対する誤解を生じるとともに、解釈主義的アプローチをはじめとする新たなアプローチの可能性を狭めてきたともいえる。解釈主義的アプローチだけがポストモダン・アプローチでないし、反一実証主義的なアプローチだけがポストモダン・アプローチではない。そもそも「ポストモダン・アプローチ」という特別なアプローチなど存在しない。あるのはポストモダンの社会を探究するための多様なアプローチだけであり、それにはこれまでの伝統的なアプローチも含まれる。
    本稿は「ポストモダン・アプローチ」という言葉がマーケティング研究の中で用いられるようになった背景をたどり、「解釈主義的アプローチ」に代表される新たな試みに対して歪曲された理解が共有されるに至った経緯を検討していく。その目的は真の意味でマーケティングにおける「解釈主義的アプローチ」の必要性と新たな方向性を見出そうとすることであり、反-実証主義を標榜する「ポストモダニズム」という桎梏から「ポストモダン・アプローチ」を解き放すことでもある。
  • 明治期百貨店の経営行動を考察対象として
    坂川 裕司
    2004 年 7 巻 1 号 p. 33-44
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    本稿では明治期百貨店を取り上げ、欧米百貨店の販売技術や経営思想が当時、どのようにして日本市場で具体化されていたのかを資料をもとに考察する。以下、明治期の呉服業界で百貨店経営を積極的に取り入れた三井呉服店に焦点を当て、小売業による需要創造を目的としたマーケティング行動を分析する。本稿全体を通じて、そのマーケティング行動が欧米百貨店の単なる模倣ではなく、日本の流通システムにおける革新であったことを主張する。
  • 浦上 拓也
    2004 年 7 巻 1 号 p. 45-63
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は、小売業と卸売業の品揃え形成における協働関係の実態を把握し、協働関係の小売業に与える効果とその変化の要因を考察することである。協働関係の変化を卸売業との機能的な相互依存関係の変化としてとらえ、その効果を小売業の内部機能構造の変化からとらえた。この課題を明らかにするために、内部機能構造が異なる食品スーパーA社とB社に対する卸売業W社との長期間にわたる協働関係の比較事例研究を行なった。
    品揃え形成の協働関係の変化は、2つのパターンから生じていた。1つが、協働関係の効果である学習による品揃え形成能力の向上が、卸売業との機能的な相互依存関係に対する期待を変化させるためである。この学習は、内部機能構造によって規定されている。いま1つが、内部機能構造そのものが変化し、同時に機能的な相互依存関係が変化する場合である。小売業の内部機能が、協働関係の小売業に与える効果と変化の大きな要因であることを示した。
  • 産業集積および商業集積の有機的結合を事例として
    金 珍淑
    2004 年 7 巻 1 号 p. 65-80
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    本稿では、産業集積および商業集積の結合という視点から、製品開発において多様性と迅速性を生み出す東大門アパレル市場のパプォーマンスを分析した。その結果、中小規模のアパレル商人と顧客が市場に密集し相互作用することによって多様な需要が発生すること、集積内の企業情報をもつアパレル商人の調整によって消費者情報が生かされた製品開発が行われること、アパレル商人が開発した製品に対する即時的比較評価によって製品開発のリードタイムが短縮されることが明らかになった。
  • 崔 錫信, 朴 炯昊
    2004 年 7 巻 1 号 p. 81-94
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/08/16
    ジャーナル フリー
    本研究は、探索的研究として同じ東洋文化圏に属しながら、社会・文化的背景が異なる韓国と日本の大学生を対象に、ライフスタイルの特性を分析し、両国の新世代の消費文化を比較することを目的としている。両国の新世代の大学生は、すでに新しい需要を創り出す細分化された市場としてマーケッター達の関心を集めているが、国家間市場を細分化し、それに伴う適切なマーケティング戦略を樹立するには、何が望ましいことであるかを事前に検討する研究の一環である。
    ライフスタイルは、衣生活分野、購買およびショッピング習慣、価値観、情報追求性向、インターネット広告などの五つの領域で構成されている。各領域別に因子分析を実施し、全部23部門の要因が抽出され、韓国と日本の大学生における集団問の各要因別差異を分析した結果は、全部で18部門の差異を表したが、5部門では差が見られなかった。そして、両国の学生は、余暇活動の類型と程度で差異を表し、人口統計的要因が国籍と相互作用を通じて、余暇活動で異なる影響を及ぼしていることと分析された。
    このような研究結果は、社会・文化的環境が異なる他の消費者集団の深層的理解と差別化を可能にし、また両国の新世代を対象とした製品およびサービス市場のマーケティング戦略樹立のための基礎資料として活用できるであろう。
  • 矢吹 雄平
    2004 年 7 巻 1 号 p. 95-109
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    昨今、地域のマネジメントに関心が集まるなか、地方財政の危機などを背景に自治体がその主導的主体から “撤退” しようとしており、地域運営全体を見通す視点が重要性を増している。また相前後して、自治体にも企業の経営管理手法を導入する動きが活発化しているが、自治体運営にマーケティングをいかに位置づけるかという問題は依然残ったままである。
    このような状況に対して本稿は、地域マネジメントの特性が「主体の複数性」とそれらの「連携」であるとした上で、マーケティング機能を中枢に据えた自治体運営の基本構造を提示し、「自治体マーケティング」の位置づけを試みる。そして、その新たな展開方向と今後の課題を示して、今こそわが国の環境変化に適合的な「自治体マーケティング論」が希求されていることを問題提起する。
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