抄録
MRIで大脳白質病変が認められた先天性筋強直性ジストロフィー(CMyD)の幼児を経験したので、臨床経過を解析し、CMyD小児の剖検脳4例の検討を踏まえて、大脳白質病変形成の機序を考察した。症例は筋強直性ジストロフィー(DM)の家系に生まれた3歳男児。周産期の羊水過多、呼吸障害のエピソードとミオパチー様顔貌、筋緊張低下および精神運動発達遅滞が認められた。MRIでは側脳室後角優位の脳室拡大と脳室周囲白質に多巣性の高信号が認められ、脳室周囲白質軟化(PVL)の所見に類似していた。CMyDの4剖検例の神経病理所見では、全例に古い軟化巣を含む大脳白質萎縮が認められた。CMyDの多くは新生児期に呼吸障害を呈するので、PVLは周産期脳障害によるとも推測されるが、成人発症のDM症例においても白質病変が知られている。したがって、CMyDでは周産期の脳低灌流はPVLの主な発生要因と考えられるものの、myotonic dystrophy protein kinase遺伝子異常が白質軟化発生の素因となっている可能性もあり、今後の検討を要する。