抄録
はじめに
四肢・体幹の変形拘縮が強く、体位ドレナージ・肺理学療法が困難な重症心身障害児(者)において、肺炎・無気肺の予防・治療は重要な課題である。陽・陰圧体外式人工呼吸器(以下、RTX)は非侵襲的であり、クリアランスモードの使用により、喀痰排出困難例に有効とされている。今回、呼吸器感染症を繰り返し遷延化したために、気管切開術を要した患者3例にRTXを使用し有用であったため、ここに報告する。
症例
一例目は42歳、男性。てんかん性脳症後遺症。X年1月に肺炎・無気肺が遷延化し、気管切開術を施行した。4月からRTXによる気道クリアランスを1日2回・週5回の頻度で開始した。二例目は40歳、男性。点頭てんかん後遺症。Y年11月に、肺炎・無気肺による呼吸不全が悪化し、気管切開術の施行および人工呼吸器を導入した。Y+1年4月から1日1回・週5回のRTXによる気道クリアランスを開始した。三例目は55歳、女性。周産期障害後遺症。Z年7月から呼吸器感染症を繰り返した。Z+1年9月から1日1回・週5回のRTXによる気道クリアランスを開始した。10月に気管切開術を施行した。なお、3例ともRTXの導入にあたりご家族のインフォームドコンセントを得た。
結果
症例1、3ともRTXによる気道クリアランスを開始後排痰は良好で、平均体温の正常化・発熱回数の減少を認めた。症例2はそれに加えて自発呼吸が安定化し、日中の人工呼吸器からの離脱時間が大幅に延長する効果を認めた。
考察
重症心身障害者の中には嚥下機能の低下に伴い呼吸器感染症を繰り返す症例が多い。気管切開術などの気道管理を導入しても、なかなか状態の改善が得られず、徐々に呼吸管理の条件が悪化していくことも多い。今回そうした症例にRTXによる気道クリアランスを施行した結果、呼吸理学療法の一つとして有用であると考えられた。