抄録
はじめに
当センターでは重障児の呼吸障害に対して姿勢管理やBTX、ネックカラーやエアウェイの調整、非侵襲的換気療法(以下、NPPV)の導入を試みてきた。このたび唾液誤嚥のある重障児の呼吸管理にNPPVを導入し、排痰効果を促進できた症例を経験したので紹介する。
症例紹介
症例は3歳8カ月の男児。診断は重度仮死(AP:0/1)、脳性麻痺(痙性四肢麻痺)。生後より胃食道逆流による嘔吐を繰り返し8カ月でNissen吻合術・胃瘻造設術施行。10カ月時に呼吸不全で気管切開を勧められたが家族の同意が得られず1歳でT病院を退院。1歳1カ月から当センターで短期入所を利用しながら在宅生活をされている。反り返りが強く吸気時に唾液の気管浸入があり、呼気時に腹筋群の緊張が強まる。下顎後退や舌根部の緊張で上気道は狭くなる。超重症児スコアは30点で呼吸管理にエアウェイを使用し1時間に1回以上の吸引が必要で栄養は胃瘻部から注入。
経過
1歳1カ月より腹臥位管理を始めた。1歳3カ月からネックカラーとエアウェイの使用を始め筋緊張にBTXを開始した。2歳くらいに反り返りや夜泣きが増え日中の不機嫌が目立つようになった。2歳4カ月よりフィリップス社のBiPAPを導入し夜間使用を始めた。NPPV 導入にあたり、マスクやバッグでの加圧空気に慣れさせ、器械換気の設定を調整した。
結果
NPPV導入後、一回換気量の増大(100ml→ 150ml)、感染頻度(2〜8回/月→0〜1回/月)および重症化の減少、睡眠リズムの安定が得られた。換気量が増え咳による喀痰力が増大し(最大呼気量200ml→350ml)、分泌物の効果的な吸引に繋がった。
まとめ
本児のNPPV導入には上気道の確保が重要で、効果的な使用には分泌物の管理に加え、リーク調整や皮膚管理などチーム内の理解と協力は不可欠だった。NPPV導入は本児の呼吸状態の根本的な改善には至らず3歳4カ月に喉頭気管分離術を行ったが、手術までの間を良い状態に保つにはとても重要な方策だった。