日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
B05 溺水後遺症児の可能性を引き出す療育を行って
新谷 文子大津 友里江徳永 裕司松野 真実高野 友子下川 真由美横尾 名穂子吉田 大記松藤 まゆみ橋本 和子
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2010 年 35 巻 2 号 p. 250

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抄録
はじめに 超重症児はベット上で過ごす事が多く、発達に必要な様々な経験が少ない。そこで安全面に配慮しながら療育活動に参加させようとチームアプローチを行った結果自発呼吸が促進し脳波の変化が見られ、QOL向上に繋がった症例を報告する。 事例紹介 対象: 7歳 男児 主病名:溺水後遺症(4歳時受傷)低酸素性虚血性脳症 脳幹機能障害 入所時の状態: JCS300、呼吸器離脱困難。痙攣頻。感染症頻。 目的 予防ケアをベースに、様々な活動に参加させ呼吸器離脱や反応引き出す。 実施と結果 (H19,10〜H22,3)リハ:胸郭や口腔周囲の柔軟性を引き出すROM訓練・呼吸リハによって下顎の動きが見られるようになり、自発呼吸が上達し数時間の呼吸器離脱可能となった。看護:誤嚥性肺炎予防のために呼吸リハ、バイブレーション、腹臥位、口腔ケアなど行い、感染症罹患が減少し療育参加回数が増えた。音楽療法:好きな音楽やテレビ番組を見せ、友人の声を聞くことで、期待反応や脳波での変化が見られた。療育:遊具・机上活動に取り組みやすくなったことで、眉や舌、腕を動かすなどの反応が見られるようになった。また、家族の毎日の面会により、一緒に療育活動に参加できた。学校との連携:担任もカンファレンスに参加、目標を統一した。 考察 自発呼吸時間が増えると共に、体の柔軟性も増し、座位保持装置に乗車しやすくなった事で、療育活動、外出、訪問授業も受け、脳波にも変化が出てきた。以上より、僅かなサインを見逃さずに、受け止めることが出来るのが、重症心身障害児(者)施設のスタッフだと思う。その為には、チームアプローチは必須であり、家族の愛情も大きい。今後、確実に生活リズムに乗せ、自発呼吸を促していきたい。そのためには、本児を取り巻く全ての職種の関りを継続し、QOLを向上させていきたい。
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© 2010 日本重症心身障害学会
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