抄録
はじめに
ネマリンミオパチーは、骨格筋の先天的構造異常による著しい筋力や筋緊張の低下を示し、重症の場合は新生児期から人工呼吸管理や経管栄養を必要とする。そのため全身管理に関する報告は見受けるが、リハビリテーションに関する報告は少ない。
症例紹介
5歳5カ月の男児。3歳10カ月の当園入所時、floppy infant肢位をとり、Th7を頂点とするCobb角20°の側弯や四肢関節の可動域制限を認めた。自発運動は部分的で、全身的に徒手筋力テスト(MMT)2かそれ以下、右肘関節屈伸のみMMT3で抗重力運動が可能であった。視聴覚刺激や問いかけに対し、模倣・頷き・発声等がみられるもyes-noは不明瞭、認知面は2歳4カ月レベル(絵と絵のマッチング可能)で、経験不足や環境から得られる刺激の乏しさによる遅れが認められた。
アプローチと経過
方針として、自発運動促進、変形・拘縮進行予防、長期的にはトーキングエイドやPCの使用を目標に、物の操作や因果関係の理解を促していくこととした。
自発運動は、上下肢ともに除重力肢位を取り入れ、専用に作製したスリングにより促していった。その結果、運動のバリエーションが増加し、更にスリングを病棟に導入し日常的に使用することにより、不動による筋萎縮を防ぐことができた。身体前面での巧緻活動により、手の使い方も多様となった。
また、バイタル面の不安定さから長時間は困難であった座位は、ギャッジアップベッドを導入し、体幹・頭部を支持しながら段階的に角度を上げていったところ、バギー座位でも慣れがみられ、1時間以上の散歩や活動も可能となった。
スイッチや機器操作の理解については、玩具と一対一で繋いだスイッチを押すこと、スイッチを必要な時間押し続けること、PCでタイミングよくクリックすることなどを段階的に行い、口頭や手さしでの選択も可能となった。現在はオートスキャンによる入力を学習している。