日本重症心身障害学会誌
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Print ISSN : 1343-1439
一般演題
B36 医療的ケア研修会の開催
−在宅医療の支え手を育成するために−
田中 総一郎
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2010 年 35 巻 2 号 p. 265

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抄録
はじめに 在宅人工呼吸器、吸引や経管栄養などの医療デバイスを利用しながら在宅移行をする子どもが増えている。これは、どんな重症な子どもでも家庭で育つ機会を保障しているが、反面、ケアする家族の大きな負担にもなっている。近年、これらの医療的ケアを家族以外の非医療者が行えるように法整備がなされ、医療技術研修の機会が望まれている。 方法 研修内容は、1)医療的ケア総論として法律学的整理と医学的管理について、2)姿勢管理とポジショニング、3)呼吸障害の原因とそのアプローチ方法、4)摂食嚥下障害と適切な摂食介助法、5)講演会「重い障害のある方をかけがえのない存在として」、6)実技研修(吸引・経管栄養・呼吸ケア)を行った。実技研修には、気管切開や胃瘻の子どもとご家族にもモデルさんとして参加していただき、実際のケアを通して生の声を聞く機会を設けた。吸引の実技研修では、参加者同士で口腔内の人工唾液をお互いに吸引しあい、吸引する側と吸引される側の両方を経験していただいた。呼吸ケアでは、胸郭の動きを解剖学的に学び、お互いに呼吸ケアを実施してケアによって呼吸が楽になることを体感した。 結果 ヘルパー・福祉施設職員・訪問看護スタッフらを対象に年3回の医療的ケア研修会を開催し226人の参加を得た。参加者へのアンケートから、「吸引されてみて痛いことなのだと初めてわかった」、「モデルさんのお話から、自分がやってもらってうれしいことと嫌なことを考えながらケアすることが大事だとわかった」、「講演を聴いて、障がいのある方から逆に思いやりとか優しさとかたくさんの大切なものを教わっていることに気付いた」などの意見が得られた。 結論 医療的ケアについて、われわれ医療にかかわる者は教育や福祉のスタッフと協力しながら研修会などの支援を行い、医療的ケアの必要な重度な子どもたちの生活を保障していく責務があると考える。
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© 2010 日本重症心身障害学会
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