日本重症心身障害学会誌
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P1014 胃瘻からのミキサー食注入法の効果
田沼 直之三輪 菜穂渥美 聡松尾 真理冨永 恵子田中 美江子
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2010 年 35 巻 2 号 p. 274

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抄録
はじめに 摂食・嚥下障害のある重症心身障害児者(以下、重症児者)の栄養管理は、経鼻胃管による経管栄養が最も頻繁に行われている。最近は胃瘻による栄養管理も普及し増加している。一方、胃瘻からの半固形栄養剤の注入は胃食道逆流症の防止、誤嚥性肺炎の減少、下痢やダンピング症候群への効果から近年注目されている栄養法である。我々は半固形栄養剤の代わりに、通常は経口摂取しているミキサー食を胃瘻から注入することにより、同様の効果が得られるか検証した。 対象と方法 当センターを利用されている重症児者(長期入所、短期入所、通所)で胃瘻を造設している13名(男9名、女4名、6歳〜51歳)に対し、家族にインフォームドコンセントを得てミキサー食を胃瘻からシリンジで注入した。また注入者の手技を統一するために、ガイドラインを作成した。 結果 ミキサー食の注入は、昼のみ11名、夕のみ1名、昼夕2名であった。注入に要する時間は1食あたり15〜30分で食事介助とほぼ変わらなかった。最も多くみられた効果は便性の改善であった。導入前は泥状便で整腸剤を常用していた利用者が、導入後は有形便となり整腸剤も不要となった例もみられた。また、胃食道逆流症で注入に時間をかけなければならなかった例が、導入後は短時間の注入になりQOL向上のための活動に時間を使うことができた。さらに、皮膚炎の改善した例もみられた。 考察 胃瘻からのミキサー食注入を実施することにより、経管栄養では得られない効果がみられた。本来の食事を経口摂取できない重症児者の栄養管理として、試みる価値があると思われた。問題点については、食物残渣などによる胃瘻チューブの詰まりや逆流防止弁の破損による漏れなどが指摘されている。今後これらの問題点についても検証する必要がある。
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© 2010 日本重症心身障害学会
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