日本重症心身障害学会誌
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一般演題
A19 経管栄養に関連して喘鳴の増悪を認める重症児(者)における胃食道逆流・誤嚥の評価
高橋 勇弥影山 隆司吉川 秀人小西 徹
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2011 年 36 巻 2 号 p. 277

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抄録
目的 重症心身障害児(者)(以下、重症児者)では経管栄養を余儀なくされることが多い。その中で、注入中または後に喘鳴が悪化するケースをしばしば経験する。今回、注入時に上部消化管造影および嚥下造影を行い、喘鳴の原因として胃食道逆流・誤嚥の関与について検討した。 対象・方法 当園に入所中の重症児者で経管栄養に関連して喘鳴が出現・悪化する8名(男5、女3)を対象とした。いずれも大島分類1で長期に渡って経管栄養を実施している。調査時年齢は20〜47歳(平均37歳)であった。上部消化管造影は、普段と同量の栄養剤にガストログラフィンを10倍に希釈して注入し、胃食道逆流の有無や上部消化管の形態を評価した。まだ、同時に10倍希釈ガストログラフィンを唾液にみたて少量口腔内に含ませ嚥下造影を実施した。姿勢は普段注入時と同程度に上体を挙上して行った。 結果 1)上部消化管造影:胃食道逆流を確認できたのは2例であった。1例では注入後半になり栄養剤で胃が拡張すると容易に逆流が出現し、下部食道括約部の機能低下のため胃内容が増えることで噴門部が緩み、腹圧がかかることで逆流するものと思われた。上体挙上や右側臥位などの姿勢変換を試みたが逆流の程度は変わらなかった。他の1例では注入終了までは逆流はなかったが、姿勢を水平にした際に逆流を認めた。なお、食道裂孔ヘルニアなどの形態異常はなかった。 2)嚥下造影:7例で気管内への誤嚥を認めた。胃食道逆流を認めなかった例では全例で誤嚥が確認できた。いずれも注入後半に喘鳴が強くなることから経管栄養により口腔内分泌物が増加し、それを誤嚥しているものと考えられた。 結語 経管栄養に関連した喘鳴増悪の原因として唾液などの誤嚥が多いことが示唆された。しかし、胃食道逆流も少なからず関与しており、定期的な評価が必要と思われる。
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