日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
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P1038 重症心身障害児(者)の口腔ケアに対する看護師の思い
川満 佳子須浪 紀久美高森 睦子田元 美智子
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2011 年 36 巻 2 号 p. 333

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抄録
はじめに 重症心身障害児(者)は、開口障害や筋緊張・嚥下困難などの重複障害をもち、緊張性咬反射や過敏から、口腔や口腔周囲への接触刺激によって全身の緊張を誘発させ、外傷の危険や体位保持も難しい。このような患者に対して、看護師の経験により口腔ケア方法が違い、患者個々に合った口腔ケアが出来ていないのではないかと考え、看護師の思いと行動を分析したので報告する。 目的 口腔ケア時の看護師の思いと行動を明らかにする。 研究方法 経験年齢別の看護師3名を対象に半構成的面接法にて調査を行い内容を分析した。倫理的配慮として、研究の主旨を説明し同意を得た。 結果・考察 「口腔ケア実施上の困難さに対する思い」、「実施上の困難さの対処行動に対する思い」、「口腔ケアの必要性や意義に対する思い」、「共同業務に対する看護師への思い」、「口腔ケアの基礎知識」の5カテゴリーが抽出され問題点が明らかになった。新人看護師は知識や技術、経験不足から不安を感じている。中堅看護師は、患者への思いが一方的であり自己満足かもしれないと悩み、これでいいのかと自問自答している。達人看護師は経験から得た知識や技術を生かし問題意識を持って解決行動ができている。3者ともに「患者は自分でできない、言えない」と述べているように、重症心身障害児(者)の表現は繊細かつ微弱で相手に伝わりにくい。われわれ看護師は彼らの発するサインを理解するために、感受性を高め的確に受け止め、より良い看護を提供できるように努力することが必要である。さらに個別の発達レベルを知り、障害の程度によって様々な展開をしたうえで、重複障害に合わせた安全で安楽な口腔ケアを提供する。今後は看護師の経験から得た知識や技術、アセスメント力などを活かし、具体的な症例による指導や勉強会、またスタッフ間で情報共有するなど看護師教育の取り組みが必要である。
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© 2011 日本重症心身障害学会
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