日本重症心身障害学会誌
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P1043 重症心身障害児(者)の手指の保湿効果を高めるスキンケアについて
井田 恵小出 初恵
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2011 年 36 巻 2 号 p. 335

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抄録
目的 皮膚の乾燥を防ぐためのハーフビネガーを用いたスキンケアの有効性が報告されている。今回、ハーフビネガーのスキンケアを2カ月間実施することで、乾燥と手なめ・手を噛む行為等から皮膚トラブルのある患者の手指の保湿効果が持続するか検証した。 方法 手背に皮膚トラブルのある患者4名にハーフビネガーの噴霧を1日1回(午前中)2カ月間施行。手背の水分・油分・弾力・pH値を施行前14日間(以下基本値)とハーフビネガー使用中のケア施行前の皮膚状態(以下ケア前)と施行15分後の皮膚状態(以下ケア後)を計測。各対象者の平均値の変化と全対象者の1カ月目と2カ月目のケア前後の各値の平均値をt検定し、保湿ケアの有効性を検証する。 結果 水分・油分・弾力の基本値の平均と、1カ月目・2カ月目の平均を対象者別に比較すると、1カ月目では3人がケア前、ケア後とも0.03〜1.06プラスの値となった。2カ月目では2人がケア前、ケア後とも0.15〜1.04プラスの値となったが、1人は0.46〜1.41マイナスの値となった。1人は1カ月目・2カ月目の平均値がケア前、ケア後とも基本値より0.79〜1.18マイナスの値となった。pHの基本値の平均は4人とも3.29〜3.46弱酸性で1カ月目・2カ月目も同様に3.32〜3.9と弱酸性であった。対象者の水分・油分・弾力を1カ月目・2カ月目のケア前後の平均値を比較、t検定したところ有意差があり、長期間ハーフビネガーを使用する有効性は得られなかった。 考察 乾燥が主の患者には保湿効果はあったが、手なめ・手噛み等の機械的刺激が加わると、ハーフビネガーが皮膚に浸透する前に剥がれ2カ月間使用しても保湿効果を得ることは出来なかった。また、保湿剤の塗布後に手の保護を必要とする場合、手なめ・手噛み等の常同行為による影響がないよう患者に関わりながら、ケアを行っていくことが必要である。
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© 2011 日本重症心身障害学会
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