日本重症心身障害学会誌
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Print ISSN : 1343-1439
一般演題
P1046 重症心身障がい児(者)の最期において代理決定を担う家族の支援
−福祉職の立場から−
丸澤 由美子横井 弓枝上谷 静香中野 早織村山 伸江
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2011 年 36 巻 2 号 p. 337

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抄録

目的 病棟では家族と医療者が患者の最期について話し合う機会は限られており、患者の急変時に家族が医療の選択に戸惑ってしまう現状がある。そこで、家族が患者の最期についてどのように考えているのかを知り、福祉職としてどのような家族支援が必要か検討する。 対象および方法 長期入院中の重症心身障がい児(者)40名の家族を対象とし、平成23年3月〜5月にアンケート調査を実施した。調査内容は、急変時に希望する治療、患者について相談できる相手、病棟スタッフと話し合う時間の必要性など11項目であり、選択方式にて回答を求めた。分析は各項目間の相関係数を算出した。回収率は20.8%であった。 結果と考察 「相談相手がいる」の項目と「胃ろうを造設していない人」「腸ろうを造設していない人」との項目に負の相関があった。「患者の今後について心配なことがある」「患者の急変時の治療について考えたことがある」の項目と「今後最期について病棟スタッフと話し合う時間が必要だと思う」の項目には正の相関があった。これらのことから、患者家族は患者の病態に関して相談する人や話し合う時間を必要と感じていることがわかった。しかし、その他の質問項目と「話し合う時期」の項目間に相関は認められなかった。これは、重症心身障がい児(者)の病態が個別的、かつ複雑で流動的なためと考えられる。福祉職としては、一人ひとりの患者が最期までその人らしく過ごせるように、家族が患者の最期も含めた将来を考えることを家族に寄り添って支援することが大切である。親の高齢化や家庭環境の複雑化に伴い、家族背景を理解した上での対応も重要である。患者の将来を支えるための家族同士での学習会・講演会実施に向けた働きかけや身近に疑問をつぶやける相手として、医療者への橋渡し役としての機能の向上、より柔軟に家族支援が行えるようなシステム構築等が課題であると考える。

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© 2011 日本重症心身障害学会
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