日本重症心身障害学会誌
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O-1-A-17 重症心身障害者病棟におけるインフルエンザワクチン被接種者の抗体反応
本庄 高司津川 敏
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2012 年 37 巻 2 号 p. 263

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抄録
目的  済生会西小樽病院 重症心身障害者施設では、2009年、入所者全員にインフルエンザワクチンを接種したにもかかわらず、同年12月にインフルエンザA/H1N1 pdm 2009 が流行し入所者39例が罹患した。ワクチン効果は限定的だったが、その流行によって次年度のインフルエンザワクチン被接種者がどのような抗体反応を示すかは臨床的意義のあることと考えられた。そこで、2010年度にインフルエンザワクチンを入所者に接種し、その抗体反応ならびに臨床的効果について検討した。 対象と方法  当施設入所者109例(年齢3歳〜83歳、平均年齢34.9歳)に対して、2010年11月にインフルエンザ三価ワクチンを接種した。接種前、接種1カ月後、接種4〜5カ月後に採血し、得られた血清を用いて3種類(A/H1N1 pdm 2009、A/H3N2、B)のワクチン株に対する血清HI抗体価を測定した。 結果 1. 被接種者の抗体反応は3種類のすべてにおいて、EMEA(欧州医薬品庁)のインフルエンザワクチン 評価基準を満たした。とりわけ、A/H1N1 pdm 2009に対する反応は良好だった。 2. 2009年に流行のあった病棟では、発症者のいなかった病棟と比べて、接種前・接種1カ月後・接種4〜5カ月後 のいずれにおいても、A/H1N1 pdm 2009血清HI抗体価が高く、統計学的有意差を認めた。 3. 1例において、2011年1月、インフルエンザA/H1N1 pdm 2009に罹患したことが血清学的に確認された。2010年度の罹患者は 全病棟で1例のみで流行は免れた。 結論  2010年度に接種されたインフルエンザ三価ワクチンのうち、A/H1N1 pdm 2009に対する抗体反応が良好だったのは、2009年のインフルエンザ病棟内流行による基礎免疫の存在が大きいと考えられた。
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© 2012 日本重症心身障害学会
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