抄録
はじめに
重症心身障がい児(者)(以下、重症児)は寝たきり状態で生活することが多く、過剰な体重は臓器圧迫等を、るいそうは褥瘡等を引き起こす可能性がある。栄養・体重コントロールは重要な問題の一つであるが、重症児を対象とした体格や栄養状態についての報告は少ない。
対象・方法
2011年8月A病棟に入院中の20歳以上の重症児34名(生存群)、A病棟を2000年〜2011年の間に死亡退院した20歳以上の長期入院患者11名(死亡群)、計45名を対象とした。生存群は2011年8月のデータを、死亡群は死亡日より半年以上遡り、かつ健常時点でのデータを収集し各評価項目に沿ってデータの比較・検討を行った。
結果
以下数値データは平均値で示す。対象患者の年齢は41.4歳、鈴木のスコアは14.4点であった。体格は身長148.8cm、体重32.7kg、BMI14.7、ローレル指数100.2であり、体重・BMI・ローレル指数は経年的変化を認めなかった。男性は女性に比べ有意に身長・体重が高値であった(男性;156.4cm、35.8kg、女性;139.3cm、28.9kg)。血液データは総蛋白(TP)7.1g/dl、アルブミン(Alb)3.6g/dlであり、男女差は認めず、TP・Alb値は経年的に低下傾向にあった。また、死亡群の血清TP・Alb値は生存群に比べ有意に低値であった(生存群;TP 7.2 g/dl、Alb:生3.73 g/dl、死亡群TP 6.8 g/dl、Alb 3.13 g/dl)。
考察
当院における重症者の身長・体重・BMI・ローレル指数は一般的な基準値に比べ低値であった。血清TP・Alb値は一般的な基準値の範囲内であったが、経年的に低下する傾向にあった。また血清TP・Alb低値は死亡のリスクファクターとしての可能性を有している。重症者の体型、栄養についての基準値は確立されておらず、今後検討を広げていく必要がある。