抄録
緒言
近年、重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))への摂食・嚥下リハビリテーションの取り組みが多く報告されている。特に重症児(者)の場合、重度の知的障害と身体障害を合併しており、窒息や誤嚥性肺炎のリスクが高いとされている。今回、横地分類A1〜B3と、摂食・嚥下機能との関連性について検討を行った。
方法
対象は施設入所中の横地分類A1〜B3に該当し、経口摂取を行っている者34名(平均年齢48.8歳)であった。基本情報はカルテから収集し、職員の食事介助の下、昼食時の摂食・嚥下機能評価を行った。評価項目は口唇閉鎖、舌の動き、舌突出、顎運動、顎のコントロール、食事時の症状、口腔内での食物処理法、異常パターン動作を大項目とした。その評価をもとに知的レベルと移動レベル間での比較を行った。実施期間は2011年12月〜2012年3月であった。なお、本研究は岡山大学倫理委員会で承認を得て、保護者には書面での同意を得て行われた。
結果
知的レベル(AB群)間ではA群で捕食や口唇閉鎖が困難であることが多かった( p < 0.05)。また1年間での肺炎・気管支炎の既往についてもA群に多く見られた( p < 0.05)。口腔内の食物処理法では逆嚥下、押しつぶし嚥下の小項目でA群が多く見られた( p < 0.05)。一方移動レベル(1〜3群)間では移動レベルが低いほど口唇閉鎖が困難であった。その他の項目ではいずれも有意差を認めなかった。
考察
本研究では横地分類の知的レベル、移動機能レベルと摂食・嚥下機能に関連があることがわかった。これは、重度の障害に該当するほど摂食・嚥下機能障害により誤嚥や窒息のリスクが高いことを反映していると考えられた。