日本重症心身障害学会誌
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一般演題
O-1-B-09 ATP衛生管理基準による配膳室(車)の衛生管理改善の試み
宇佐川 瞳中山 裕子
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2012 年 37 巻 2 号 p. 269

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抄録
はじめに 当施設では、これまで業者による細菌拭き取り検査を実施してきたが、新たに職員によるATP(アデノシン三リン酸)拭き取り検査(以下、ATP法)を導入した。当施設のATP衛生管理基準値・判定表を設定し、配膳室の衛生管理の上で特に配膳車の清潔度について分析・評価したので報告する。 目的 ATP法を用いて清潔度を判定し、配膳室(車)の衛生管理改善を目指す。 研究方法 1.調査対象:温冷配膳車 2.測定方法:ATP拭き取り検査機(機種ルミテスターPD-20®、試薬LuciPac Pen®)によりATP総量を測定 3.判定方法:当施設設定の基準値・判定表 結果 配膳室の衛生強化策の1つとして配膳車の消毒方法を検討した結果、1)消毒剤(次亜塩素酸Na溶液・強電解酸性水)による清拭で帰庫直後の測定平均値よりそれぞれ1/10以下に減少した。2)病棟内配膳車扉取り扱い時の手指消毒施行(強電解酸性水・アルコール)でそれぞれ測定値が2/3以下に減少した。今回、各消毒剤による優位差は認められなかった。 考察・まとめ 当施設独自のATP基準値・判定表を設定し最衛生エリアである配膳室の清潔度を判定した。判定結果より配膳車に重点をおき、外部との接触頻度が高いことを要因と考え、消毒方法を変えて検証した。1)帰庫直後、消毒剤による清拭を徹底し、2)病棟内配膳車扉取り扱い時の手指消毒を施行し、清潔度が大幅に改善した。これを継続施行し、配膳室の衛生保持・感染予防にもつなげたい。ATPは生物が持つエネルギー代謝に必須の物質で、その総量は微生物+食物残渣を意味し、消毒効果の指標となり清潔度を反映する。ATP法は適時に測定でき簡便で迅速性に優れているため作業や職員の意識も改善しやすいと考える。利用者の健康を守る安全な食事提供のためにATP法を実施し、当施設設定の基準値・判定表を用いて広く衛生状況の検証を繰り返し、衛生管理の向上に努力していきたい。
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© 2012 日本重症心身障害学会
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