抄録
目的
重症心身障害児(者)(以下、重症児)では骨粗鬆症が高頻度にみられ、骨折のリスクが高い。重症児のケアにおいて骨折予防は最重要課題の一つである。重症児施設での調査によると、年間の骨折頻度は2%台を上下している。今回、一重症児施設において長年にわたり測定されてきた重症児の骨密度を解析した。
方法
対象は、くまもと芦北療育医療センターに入所中の重症児で、約20年にわたり測定した骨密度が解析可能であった73名(男性33名、女性40名)。測定開始年齢は、6.2歳から55.9歳(平均27.5歳)、測定回数は平均約22.0回。測定はDEXA法(単位:g/cm2)によった。統計解析はSPSS®(Mann-WhitneyのU検定)を用いた。
成績
約20年間で途中から骨密度値が低下した者が46名(男19名、女性27名)、ほとんど変化しなかった者が27名(男性14名、女性13名)であった。男女でそれぞれ低下群と不変群の間の骨密度(低下群はピーク値)を比較すると、男性で不変群が有意に低かった(男性:0.817 vs. 0.670, p = 0.004、女性:0.796 vs. 0.743, p = 0.497)。男女でそれぞれ寝たきり群と座位可能群の骨密度を比較したが、有意差はなかった(0.707 vs. 0.786, p = 0.338;0.748 vs. 0.851, p = 0.069)。
結論
18年以上にわたって骨密度を測定できた重症児(者)の測定開始年齢は平均27.5歳(6.2〜55.9)であった。重症児(者)でも健常者と同様に年齢とともに骨密度の増加と低下がみられた。最大骨密度に達する年齢は、男性が27.8歳、女性が28.5歳であった。一度増加した骨密度が年齢とともに低下する群と、あまり低下しない群に分かれた。男女とも後者の骨密度は前者のピーク値より低かった(男性で有意差(+))。運動機能が高いと骨密度が高い傾向がみられた。