日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
O-2-B-19 重度の障害者が演奏を楽しめる電子楽器サイミスの開発
−微細な力・動き検出のデバイスと身体動作検出のKinect®−
赤澤 堅造
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 37 巻 2 号 p. 295

詳細
抄録
音楽を聴いたり、歌ったり、演奏したりすることにより、心身の健康の回復、向上をはかる行為として音楽療法がある。幸福感や生活の質を高め、症状を軽減し、初期治療やリハビリテーションの効果を高めてくれるからである。音楽療法において、聞くだけでなく、ハンドベル、鈴、太鼓などの楽器を使用したセッションがある。また国内では、3〜4人がテーブルに座り、テーブルを叩くことにより、録音している曲を演奏するという機器が発売された。しかし、現状では、障害者が楽器演奏をすることは一般的ではない。 脳計測技術の進歩により、演奏と脳活動、脳の可塑性の関連性を明らかにする研究が可能となり、最近、楽器の使用が脳卒中患者の運動機能回復において非常に効果的であることが明らかにされている(J.Neurology 2007)。音楽療法のニューロリハビリテーションへの効果を示唆するものである。 われわれは障害のある人が演奏できるように、楽譜データをコンピュータに内蔵した新しいタイプの電子楽器Cymisサイミスを開発している。パソコン、タッチパネル、スイッチ、呼気圧センサなどのインターフェースからなる楽器である。個人により機能障害の程度が異なり、またその種類も違うので、種々のタイプのインターフェースを開発している。最近、重度の障害児のために、非常に弱い力(1グラム)に反応できるエアバッグ利用のスイッチを開発した。Kinect®(モーションキャプチャー、ヒトの動作を計測する装置)も利用可能とした。 2008年にフィールド実験を開始し、現在国立病院、重度心身障害の療育施設、支援学校を含め、10施設で実施している。1名の脳性麻痺の方では、ほとんど動かなかった中指が約10カ月後には約10mm以上動くという結果を発見した。1施設では、40名(障害程度区分 平均5.7)が個別に毎週20〜30分演奏を楽しんでいる。発表ではインターフェースと演奏の実際と効果、課題などについて報告する。
著者関連情報
© 2012 日本重症心身障害学会
前の記事 次の記事
feedback
Top