抄録
重症心身障害児(者)と関わる際、私たち療育者は、対象児(者)のできることと分かることを一つでも多く知りたいと思う。この背景には、彼らは何も分かっていない、何もできないという存在ではなく、いろいろと分かっていることや潜在能力もあるけれども、私たち療育者がそれに気づけず、引き出せていないと、私たち自身が対象児(者)と関わる際に実感しているためである。私たち療育者は、自分たちの働きかけに対する対象児(者)の応答をつぶさに「観察」し、様々な機能や能力を知ろうとしてきている。私たちが対象児(者)のことを分かろうと思えば思うほど、この「観察」=事実に対する客観的裏づけが欲しいと願う療育関係者は多い。「慣れた自分だけが」、「母の想いが」と客観性に対する疑問の声が上がるなか、「観察」しか手段をもたない私たちは、何らかの科学的指標をつくり上げたいと同時に願う。本稿では、神経生理学的な手法を用いた対象児(者)の応答性理解の取り組みや、応答性を引き出すための関係発達的視点について紹介する。