日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
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P-2-C-15 重症心身障害児を持つ母親の社会的支援ネットワークに関する研究
千葉 伸彦
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2012 年 37 巻 2 号 p. 333

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抄録
目的 本研究では、重症心身障害児(以下、重症児)をもつ母親のこれまでの生活の様子や地域とのつながりについて分析し、重症児の地域生活の継続に必要となる社会的支援ネットワークのモデル、重症児の生活を支える体制のあり方を検討する。 方法 重症心身障害児(以下、重症児)をもつ母親らの生活ニーズの把握、日常的な生活の様子、社会的支援ネットワーク有無の状況、フォーマル・インフォーマルサポートの状況を把握することを目的とし、A県B市に在住する重症児をもつ母親ら4名を対象に、グループインタビューを実施した。グループインタビューはC相談支援機関内の一室で実施した。 結果と考察 母親らの語りについて検討を行った結果、生活ニーズとして、「生活実態の理解促進」「サービス利用の柔軟性」「既存サービスの利用拡大・新サービス創設」「情報集約と情報提供窓口の設置」「社会的支援ネットワーク構築」「ピアサポート体制構築」を求めていることが明らかとなった。また、地域における支援ネットワークについては、「母親自身の健康管理」が子どもの命を支える基盤となっていること、「現在の生活を維持することの重圧」を母親が一手に引き受けている様子を伺うことができた。また現在生活している地域内では「相談相手がいない」、「家族以外の支援者がいない」現状に対する訴えが見られた。しかし、家族間における重症児の支援状況についても十分ではないとの語りもみられ、そういった家庭環境の中、家庭外に支援や助けを求めることの遠慮から母親一人が子育てを担っている現状が明らかとなった。将来的には、母親たちが重症児の利用できるサービスの立ち上げや母親同士の日常的な支え合いを必要としており、NPO法人や福祉サービス事業所等、重症児の支援に先駆的に取り組んでいる助言者を必要としている状況であると考えられる。本研究は科研費(23730537)の助成を受けたものである。
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© 2012 日本重症心身障害学会
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