日本重症心身障害学会誌
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教育講演1
病理所見からの、重症心身障害の病態の理解
林 雅晴
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2013 年 38 巻 1 号 p. 19-25

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抄録

MRIをはじめとする画像診断の進歩はめざましく、病理解剖によって明らかにされてきた疾患の生前診断も可能となり、近年、世界的に剖検数が減少している。剖検を含む臨床病理学的解析が重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))の医療にどのように貢献するかを、原因疾患の同定、全身臓器病変、予期せぬ死の解析を通じて概説した。先ず生前診断が困難な微細な脳奇形dentato-olivary dysplasia、原因疾患の病態が検証された亜急性硬化性全脳炎と乳児神経軸索ジストロフィーを取り上げた。次に重症児(者)の一般臓器病変に関して、2000年以前に重要性を指摘した肺間質線維化、肝グリソン鞘線維化、腎糸球体硬化が、2001-2011年の検討でも増加していること、ならびにセレン欠乏などに伴う心筋病変、膵・胆道系病変にも留意する必要があることを強調した。最後に重症児(者)死因の5%前後をしめる予期せぬ死に関して、府中キャンパスでの検討から、カテコールアミン神経、セロトニン神経、神経ペプチドの脳幹部異常、ならびにc-Fos陽性神経細胞の増加を指摘し、自律神経機能検査、誘発電位検査による生前のリスク評価を提唱した。

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© 2013 日本重症心身障害学会
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