日本重症心身障害学会誌
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O-2-A-02 筋緊張が強く人工呼吸器を使用している重症心身障害児(者)の腹臥位の取り組み
前田 悟原島 勝
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2013 年 38 巻 2 号 p. 286

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抄録
はじめに Aさんはアテトーゼ型で筋緊張が強く、脊柱の右凸側彎と前彎の変形がみられ上下肢も屈曲拘縮があるため日常生活は仰臥位で過している。筋緊張で反り返り状態になると前彎の変形が大きくなり脊柱と胸骨に気管支が挟まれて呼吸困難となる。気管支の狭窄と仰臥位姿勢で十分な排痰ができず右背側下葉無気肺もあり人工呼吸器を24時間装着している。腹臥位により筋緊張の改善と気管支の閉塞を防ぐため、腹臥位療法の効果を検証したので報告する。 対象者 56歳 男性 脳性麻痺(アテトーゼ型)、右背側下葉無気肺、閉塞性拘束性呼吸障害 倫理的配慮 本研究は倫理委員会の許可を得て保護者に研究の趣旨を説明し書面で承諾を得て行われた。 方法 腹臥位マニュアル、観察シート作成し、実施前後の緊張、排痰状況を観察し呼吸評価を行う結果心拍数は、5分間、10分間の心拍数と比べ15分間の心拍数が80回以下となり、20分間では心拍数は増加した。経皮的酸素飽和度は、いずれも92〜100%の範囲で変化が見られなかった。自発呼吸は、呼吸評価2012年7月20日と腹臥位実施2カ月後では、1回換気量と分時換気量とともに増加し、変化が見られた。排痰および吸引の回数は、腹臥位前後の変化は見られなかった。CT検査結果は、無気肺が改善されている。 考察 Aさんに適した腹臥位時間は15分が有効であり、心臓による下葉肺の圧迫の軽減、背側からの気道分泌物がドレナージされ、閉塞していた末梢気道が再開通し肺全体の換気血流比が均等化しガス交換の改善がえられたと考えられる。気管の変形、狭窄があることにより腹臥位実施直後の排痰の即効性はなかったが、CT検査結果は無気肺が改善されていることから腹臥位に姿勢変換と日常生活動作が加わることにより相乗効果が得られ排痰効果があったと考えられる。 結論 人工呼吸器を使用している重症心身障害児(者)であるAさんにとって腹臥位療法は無気肺が改善されていることから効果的であった。
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© 2013 日本重症心身障害学会
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