抄録
はじめに
感染、特に呼吸器感染は重症心身障害児において、その特有の障害のため、遷延化・重篤化しやすい。また、治療に伴う抗生剤使用の長期使用・頻度の増加は、抗生剤に対する耐性を生み、将来、必要となる治療が困難となる可能性がある。当施設では、慢性的に痰が多い、または排痰困難者に対し、無気肺・肺炎予防として2010年より、IPVを導入開始した。今回、IPV開始前・後の感染回数を比較したので、その予防効果を報告する。
研究方法
対象:柳川療育センター入所中の超・準重症児5名 年齢10〜17歳
方法:過去6年間(IPV開始前3年・IPV開始後3年)の感染症罹患歴(発熱して抗生剤点滴・内服の回数)を調査した。なお、IPVは、IPV−1C(No.0667、No.1600)の2台を無作為に使用、毎日実施とした。
結果
IPV開始後に感染回数の減少が見られたのが80%、変化なしあるいは増加がみられたのが20%であった。抗生剤内服回数では、最大年間13回の内服が4回へ減少。点滴回数では、最大年間10回の点滴が2回へ減少みられた。IPV開始後は、開始前と比較し、感染回数が減少、抗生剤の内服回数の減少、重症化による点滴の開始の減少もみられた。胸部CTでは、肺の透過性の改善が確認された例もあった。
考察
IPVは、肺内への直接作用により、分泌物を流動化し排痰を促進、また、気管支の閉塞部を開孔・無気肺を解消するなど様々な効果がある。今回、気管切開者では感染の減少、非切開者では感染の変化なしあるいは増加がみられた。確実にIPVができ排痰時の効果的吸引ができる気管切開者により効果があったと考える。私たちは、重症心身障害児に対し、排痰・吸引、リハビリテーション、ポジショニングなど様々なケアに関わることでQOLを高めることができる。QOLを損なわないためにも、感染予防は重要であり、IPV導入は、一つの有効な手段であると考える。