日本重症心身障害学会誌
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O-2-B-15 つくし医療・福祉センターでの「骨折リスク分類」と横地分類との関連性について
川野 琢也烏川 麻佑
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2013 年 38 巻 2 号 p. 295

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抄録
はじめに 当施設では骨折予防を目的にセンター独自の「骨折リスク分類」を4段階で色分けし、介護時に骨折リスクを啓発する取組みを行った。今回行った骨折リスク分類が、横地分類における「移動機能レベル」および「知能レベル」に相関関係がみられるのかを比較し課題を検討した。 対象と方法 全入所者136名(男性63名・女性73名、平均年齢46.3±45.3)に対して行った骨折リスク分類を横地分類の移動機能レベル6段階(実際には対象者の得られたレベル1〜5の5段階)と、知能レベル5段階をそれぞれフィッシャーの正確確率検定により各群間を比較した。本研究に関しては倫理委員会の許可を得ている。 結果 移動機能レベルでは1群(寝返り不可)が2〜5群に対し有意差がみられた。また5群(室内歩行可)が1〜4群に対し有意差がみられた。2〜4群間は有意差がみられなかった。知能レベルでは全群間で有意差はみられなかった。 考察 「骨折リスク分類」は9項目の骨折リスク因子を点数化し、その合計を4段階で分類している。移動機能に影響を与える因子は、寝たきりや関節拘縮(股関節・膝関節)があり、重症度に影響を与える因子としては経管栄養があるため、1群と5群に有意差がみられたと考えられる。一方、知能レベルに影響を与える因子は含まれていないため、全群間で有意差は見られなかった。重症心身障害者の骨折は原因不明なことが多く、なかでも移動機能レベルが低い方の骨折は介護時に起こっていると考えられるため「骨折リスク分類」は介護時の骨折事故予防の意識向上に効果的と考えられる。しかし、近年移動機能レベルの高い重症心身障害者(動く重症者)の転倒による骨折が増加傾向にあると報告されている。入所者の高齢化により、転倒による骨折の危険性はさらに高まると懸念されている。そのため動く重症者は「転倒リスク分類」など別の指標を作成するなどの対策が必要と考えられる。
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© 2013 日本重症心身障害学会
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