抄録
目的
重症心身障害児者の骨粗鬆症を改善し、脆弱性骨折の発生を抑制して、ADLおよびQOLを高める。
研究方法
国立病院機構病院16施設に入院中の18歳以上の大島分類1、2、3、4で骨密度70%未満の重症心身障害者を対象とした。コントロール群(C群)とエチドロネート(ダイドロネル群、D群)との2群にランダムに分け、治療・経過観察を行った。C群では従来の治療を継続し、D群ではダイドロネルを投与した。試験開始後の脆弱性骨折の発生を主要エンドポイントとし、試験開始前後での骨密度の変化と骨代謝マーカーの変化を副次的エンドポイントとした。全体で414名が解析対象となった。観察期間の中央値は25カ月であった。
結果
試験開始後に、C群で212例中4例、D群で202名中3例において脆弱性骨折の発生が観察されたが有意差は認めなかった。腰椎骨密度では、D群において有意に骨密度低下が抑制された(18カ月時 p =0.008、24カ月時 p =0.005)。骨吸収マーカーの血清TRAP5bにおいては、試験開始後6カ月、12カ月、18カ月、24カ月のいずれにおいてもD群において有意な低下( p :0.0001未満)が認められた。有害事象に関しては、有意差は認められなかった。
結語
本研究により、経口ビスホスホネート製剤であるエチドロネートの投与により、骨粗鬆症の改善ないしは進行の防止を証明する有意な結果を得ることができた。本研究の結果は、重症心身障害者の骨粗鬆症においても、一般的な老人の骨粗鬆症に対する治療が有効であることを強く示唆するものである。今後、より強力な骨粗鬆症治療薬を用いることにより、重症心身障害者の脆弱性骨折の発生の抑制も期待できると考える。