抄録
はじめに
当センターでは超音波踵骨測定法により、入所利用者127人のうち、足の拘縮や静止不能により測定できなかった12人を除く115人、男性60人、女性55人、平均年齢47.7歳(5〜79歳)の骨密度を測定した。移動機能レベルでの比較や、抗てんかん薬の影響、過去5年間の骨折歴との関係について調べたので報告する。
結果
スティフネス指数は、全体で平均41.6±21.9(47.7±13.6歳)、男性の平均46.0±24.9(44.2±14.2歳)、女性の平均36.9±16.9(51.5±11.9歳)であった。
横地分類(改訂大島分類)により利用者を移動機能レベル1から6に分類した。1:寝返り不可43人、2:寝返り可2人、3:座位保持可22人、4:室内移動可11人、5:室内歩行可22人、6:戸外歩行可15人。それぞれのスティフネス指数の平均値は1:27.6、2:31.5、3:33.5、4:45.9、5:54.5、6:72.9であり、移動機能が増すほど骨密度が高かった。また現在寝返り不可の43人を、生育歴から出生後ずっと寝返り不可の18人、レベル3か4まで一旦達した12人、レベル5か6まで一旦達した13人に分けたところ、それぞれのスティフネス指数の平均値はそれぞれ27.2、28.1、27.8で有意差はなかった。
抗てんかん薬の服用者58人と、非服用者57人のスティフネス指数の平均値はそれぞれ37.8、45.5で、服用者は骨密度が低い傾向がみられたが、有意差はなかった。
過去5年間に当センターで骨折をおこした利用者のうち、骨密度を測定できたのは14人、骨折件数17件で、2回骨折した人が3人いた。移動機能レベル別に、平均値と骨折既往者のスティフネス値を比較すると、平均値より高い人が2人に対し、低い人が12人で、2回骨折した3人も低かった。
まとめ
超音波踵骨測定法は重症心身障害児(者)の骨密度の測定に有用であり、スティフネス指数は骨粗鬆症やてんかんの治療、介護上の留意点の重要な指標となる。