抄録
はじめに
A氏は日常生活の中で不眠や昼夜逆転があり、それらが継続したときには行動障害がみられ、他患者の興奮を誘発させることがある。行動障害の発生は睡眠と関係があるのではないかと考え、適切な看護介入の方向性を得るために睡眠パターンを把握することにした。その結果を報告する。
研究目的
重複障害を伴う重症心身障害者の睡眠パターンを明らかにする。
研究方法
調査対象者:重症心身障害者 52歳男性 脳性麻痺 精神発達遅滞 てんかん 視力障害
調査期間・方法:眠りSCAN、1時間毎の行動観察から3カ月間睡眠状態を調査する。
結果・考察
調査結果よりA氏の平均睡眠時間は6時間27分だった。睡眠のとり方にバラつきはあるが成人の平均的な睡眠時間であると考える。また、26時間の睡眠覚醒リズムをもち、平均30日周期であることが分かった。A氏は視力障害を併せ持つ重複障害者のため、光刺激に対する明暗サイクルへの影響がなく、時間の概念が理解できないことから睡眠覚醒リズムの周期が通常より長いのではないかと考える。そのためA氏は26時間の睡眠覚醒リズムを約30日で繰り返しているのではないかと考える。私たちは夜間睡眠が取れていないことで発声やつばはきをしていると考えていたが、睡眠時間とは関係なく覚醒していれば発声やつばはきをしていた。また夜間覚醒していることで、不眠や昼夜逆転しているのだと考えていたが、睡眠時間が0時間だった日は調査期間中1日だけだった。昼夜逆転については26時間の睡眠覚醒リズムによって周期的にみられていたことが明らかになった。
結論
1.睡眠時間にはバラつきがあったが平均6時間の睡眠がとれていた。
2.夜間の睡眠時間と発声やつばはきの関係性はなかった。
3.A氏の睡眠パターンは26時間の睡眠覚醒リズムで約30日周期だった。