抄録
はじめに
各疾患では患者の主観的QOLが重要であり、様々な評価尺度が使用されている。しかし、重症心身障害ではその評価は困難であり、また、病態が多様なこともあり客観的な評価尺度もない。昨年度の重症心身障害者学会で、重症心身障害者40名のIGF-1の測定値を標準偏差(SD)で6群に分類し、検討した結果、低値の患者では慢性的なストレス状態にある可能性があり、要因が確定できた2症例に対策を行ったところ、IGF-1値が上昇した。今回は、IGF-1値が低値の患者に栄養補給を行ったところIGF-1値が上昇したので報告する。
研究方法
対象:高アンモニア血症、血清アルブミン、コレステロール低値などを認めるIGF-1が-1SD以下の重症心身障害者6名。研究期間:2012年12月〜2013年6月。研究方法:個々の摂食機能に適した栄養補助食品を補食し、IGF-1値の推移を検討した。
倫理的配慮
当院の倫理委員会より承認を得た。
結果
6名中5名でIGF-1値が上昇し、そのうち2名ではほぼ正常化した。また、体重は全員で増加したが、体重の増加量と血清IGF-1値の上昇の程度には特に相関はなかった。なお、血中アンモニア、血清アルブミン、コレステロール値などの改善は必ずしも認められなかった。
考察
血清IGF-1値が特に上昇した2名では血清アルブミン、コレステロール値の改善はなく、この2名では補食をすることで満足感を得ることができ血清IGF-1値が上昇した可能性がある。今回、QOLの大事な要素である食事において、補食により血清IGF-1値の上昇が認められ、血清IGF-1はQOLの指標になると思われた。