抄録
反芻症状を長年示してきた3例の動く重症心身障害者に対し、上部消化管内視鏡検査を実施した。36歳女性は、上部消化管出血症状を呈し、逆流性喉頭炎、食道裂孔ヘルニア、逆流性食道炎の所見を認めたため、プロトンポンプ阻害剤を開始した。43歳男性例では、上部消化管出血症状があり、逆流性食道炎の所見を認め、プロトンポンプ阻害剤を開始した。26歳男性例は、反芻症状しかなかったが、食道裂孔ヘルニア疑いの所見を認めた。長年反芻と考えられていたが、内視鏡検査の結果、3例とも、胃食道逆流によると思われる器質的異常を認めた。 重度の知的障害者の6~10%が反芻を呈するとされており、決して頻度の少なくない問題行動であるが、その背景には器質的異常が潜んでいる可能性があり、積極的に消化管内視鏡などで原因検査を行い、対応を図ることが必要である。