抄録
iPS細胞を用いた新たな医療が開発されつつある(Inoue & Yamanaka et al. iPS cells: a game changer for future medicine. The EMBO Journal, 2014)。本講演では、私たちが取り組んでいる、いまだ根本的治療法のない神経変性疾患に対する、iPS細胞を用いた研究を含め、最近のiPS細胞研究についてご紹介させていただく。
神経変性疾患は、ある特定の神経細胞が選択的に変性・死滅することによって生じる難治性疾患である。分子生物学によって、遺伝性神経変性疾患の原因遺伝子の発見とそれに続く機能解析、新たな仮説の誕生、モデル動物の作製など、神経変性疾患の研究は大きく進展したとはいえ、遺伝歴のない孤発性神経変性疾患は未だ謎につつまれている。また、原因遺伝子を導入したモデルマウスがヒトの症状と類似した病態を呈し、治療法開発が一気に進むことが期待されたが、根本的治療法開発は未だ成功していない。そのため、解決策の一つは、入手が困難なヒトの、患者自身の神経細胞の解析を行うことではないか、と考えられつつあった。そのような状況の中で、iPS細胞が誕生し、iPS細胞技術を用いることにより、これまで入手できなかった神経変性疾患の標的となるヒトの神経細胞を入手することが可能になった。
略歴
1992年3月 京都大学医学部卒業
1992年6月 京都大学医学部神経内科入局
1993年6月 財団法人住友病院神経内科勤務
1998年4月 国立精神神経センター神経研究所 研究員
1999年12月 理化学研究所脳科学総合研究センター 研究員
2004年4月 米国ハーバード大学医学部マクリーン病院 博士研究員
2005年4月 京都大学大学院医学研究科 脳病態生理学講座 臨床神経学 助教
2009年2月 京都大学物質-細胞統合システム拠点iPS細胞研究センター 准教授
2009年9月 独立行政法人科学技術振興機構 CREST研究代表
2010年4月 京都大学iPS細胞研究所 准教授
2014年4月 京都大学iPS細胞研究所 教授
[主な専門分野]
幹細胞医学、神経内科学、神経科学