日本重症心身障害学会誌
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シンポジウム1:障害者総合支援法からみた重症心身障害、その課題と方向性
重症心身障害施策の在り方
秋山 勝喜
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2014 年 39 巻 2 号 p. 200

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抄録

1 重症心身障害施策の変遷 重症心身障害児施設(以下、重症児施設)は、1967年の児童福祉法改正により取り入れられ、18歳を超えた重症心身障害児者(以下、重症児者)も入所対象とされ、また重度の知的障害児などで、どこの施設でも受け入れてもらえない児童(従来入所対象となっていた動く重症児等)は、社会的要請により付帯決議によって、引き続き重症児施設の入所が可能となった。 2003年社会福祉基礎構造改革により、措置制度は契約制度となり、2006年の障害者自立支援法(以下、自立支援法)の制定施行へと展開した。 2010年「いわゆるつなぎ法」の成立により、児童福祉法が改正されて2012年4月から、重症児施設の入所は、18歳未満は児童福祉法、18歳以上は自立支援法の対象とされ、これにより児童福祉法による児者一貫の制度はなくなった。2013年には自立支援法を引き継いいだ「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)が制定された。 守る会は、児者一貫の処遇体制の重要性を主張した結果、重症児者の特性に配慮し、重症児者施設支援おける児者一貫の処遇体系は維持することができた。  児童福祉法第7条は、児童福祉施設として障害児入所施設を規定、障害児入所支援とは、障害児入所施設に入所し、又は指定医療機関に入院する障害児のうち、重度の知的障害及び重度の肢体不自由が重複している児童(「重症心身障害児」という。)に対して行われる治療をいう。とした。 なお、第42条には、障害児入所施設に区分を設け、福祉型障害児入所施設と医療型障害児入所施設としており、「重症心身障害児」という呼称は残ったが「重症心身障害児施設」は「医療型障害児施設」ということになったのである。 2 施策の現状 2012年4月の改正では、18歳以上の障害児施設入所者への対応として、施設体系を3タイプに分け、事業者は、2018年3月までに「障害児施設として維持」(成人者が入所している場合には、他に移行させること。)、「障害者支援施設への転換」(障害児の入所枠は廃止する。)、「障害児施設と障害者施設の併設」(児童福祉法の医療型障害児施設と障害者総合支援法の療養介護を併設)の3体系のうちいずれかを選択した事業指定を受けることとした。 重症児施設を運営する事業者のほとんどは、第3の体系を選択している。この場合には、18歳を超える対象者は療養介護となり、障害支援区分の判定により5・6区分に該当しない入所者(いわゆる動く重症心身障害者など)は、原則として退所が勧められることになる。 日本重症心身障害福祉協会の資料によると重症児施設入所者の年齢は、平均約40歳、親の平均年齢は推定65歳となる。親は、障害支援区分判定の結果によって、入所中の重症児者が、療養介護事業の対象とならないとして退所させられるのではないかと将来に不安を持っている。 障害者権利条約は、個人の尊厳、平等、自己選択(どこで誰と住むか妨げられない。)を基本原理とするものであることから、施設入所に対する厳しい風当たりが予想される。 3 重症心身障害児(者)施設の在り方  (1)医療を必要とする重症児者の命を支える最後の砦の役割  入所待機者は、2012年2月調査で3,700人と推計  今すぐの入所希望 38.6% 将来に備えての入所希望 28.1% (2)児者一貫支援の継続実施 (3)総合支援センター機能  入所支援(NICU後方支援)、在宅支援、セーフティネットの機能 (4) 地域移行の可能者には、本人の意思を確認し、ケアーホームへの転出や、受け入れ可能な新たな施設体系について検討する必要がある。 4 在宅支援施策の充実 (1)重症心身障害児者の通園・通所事業の拡充 (2)医療的ケアのできる短期入所(日中一時支援を含む)の確保 (3)訪問看護・訪問介護の充実 略歴 秋山勝喜(あきやま かつよし) 社会福祉法人 全国重症心身障害児(者)を守る会 副会長 常務理事 (1992年~現在)

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