抄録
2014年4月1日現在、公益社団法人「日本重症心身障害福祉協会」に加盟する公法人立施設は123施設あるが、その内訳は公立公営6施設、国公立民営17施設、民立民営100施設と圧倒的に民営施設が多くを占めている。今回の法制度改正を受け、ほとんどの施設は特例による医療型障害児入所施設と療養介護事業所併設の形をとり、なんとか児者一貫の支援体制を維持した。加盟施設入所児者の総数は2013年4月1日現在で11,727名(男6,340名、女5,387名)であり、その内18歳未満が1,273名(10.9%)、18歳以上は10,454名(89.1%)である。施設の現状と課題、今後の方向性について述べる。
1.超重症、準超重症児者の増加 超重症児及び準超重症児は近年、増加傾向が著しく、1998年の総数が1,041名であったのに比べ、10年後の2008年には2,290名と2倍以上となり、直近の2012年では2,802名に至っている。ポストNICUの受け皿としてのニーズは高いが、かかるコストに報酬が見合わず多くの課題を抱えている。
2.入所者の高年齢化 入所者の高年齢化は進み、協会加盟施設の実態調査によれば、その年代は40歳代が最も多く、2013年4月1日現在で最高齢者は男87歳、女101歳に達している。入所者の高年齢化に伴い骨粗鬆化と脆弱性骨折、癌などの悪性新生物、骨関節の変性疾患等が増加傾向にあり、多くの診療科や専門職種による包括的、集学的な対応が求められる時代になりつつある。
3.被虐待児の増加 障害があることによる介護負担や日常生活上の「育てにくさ」は養育者による虐待や育児放棄を招きやすく、また虐待の結果、後遺症として重大な障害を抱えることとなる児童は、いまだ増加傾向にある。これらの障害児者にとって施設の持つセーフティネットとしての保護機能は今後も維持されるべき重要な役割である。
4.在宅支援ニーズの増加 在宅重症児者とその家族にとって、入所施設の提供する短期入所などの在宅支援サービスは、負担やストレスの多い自宅での介護を継続していく上でなくてはならないサービスであり、施設側もそのニーズの高さを認識しているが、受け入れ枠の拡大は決して容易ではない。障害の内容や必要とする医療的ケアが多種多様な在宅障害児者を一定レベルの安全性を担保しながら、利用者の利便を重視していつでも受け入れ可能な態勢を維持することは現行の法制度と給付費のもとではきわめて困難である。
5.地域差の拡大 我が国は急速な少子高齢化の時代を迎え、地方における人口の減少は加速している。総合支援法では「地域社会における共生の実現」を謳うが、その地域自体が存続の危機にさらされる中、施設のもつ機能を維持することが困難になりつつある地方もある。一方、人口集積地では、重症児者の受け皿が依然として不足しており、東京周辺や愛知等では新たな施設開設の動きもみられる。
6.今後の方向性 地域間格差が広がる中、重症児者の生命と生活が守られるためのセーフティネットとして、入所支援機能を維持、充実させながら在宅支援機能とのバランスをはかり、両者を車の両輪として前進させることが、われわれに求められる最も重要な役割と考えている。
略歴 1981年鳥取大学医学部卒業、整形外科に入局。87年同大大学院医学研究科博士課程修了。整形外科学講座助手、講師を経て92年(平成4年)より島根県立松江整肢学園副園長。96年肢体不自由児施設松江整肢学園園長、98年重症心身障害児施設松江療育園園長兼任、99年より現職。【社会活動】公益社団法人日本重症心身障害福祉協会理事。中国四国重症心身障害施設連絡協議会会長。【学会活動】日本リハビリテーション医学会代議員。日本リハビリテーション専門医会小児リハSIG常任幹事。日本脳性麻痺研究会幹事。【専門医等】日本整形外科学会専門医、日本リハビリテーション医学会専門医・指導医。鳥取大学連携診療教授。