日本重症心身障害学会誌
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シンポジウム2:重症心身障害児(者)を支える職種の専門性向上
重症心身障害看護の専門性向上への取り組み
西藤 武美
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2014 年 39 巻 2 号 p. 205

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抄録
重症心身障害の看護分野において、水準の高い看護実践のできる看護師を育成することにより、看護ケアの向上を図る「日本重症心身障害福祉協会認定 重症心身障害看護師制度」への参加施設が全国的に広がってきた。都内の看護管理者たちとこの構想を話し合ったのは2008年頃のことである。制度創設までの経緯、現時点での成果と課題について紹介するとともに、今後の専門性向上についての私見を述べる。 重症心身障害看護の専門性向上に取り組むきっかけとなったのは、2007年の看護師不足であった。入院基本料7:1看護加算の影響が大きいが、看護の原点があるといわれる重症心身障害看護の魅力を積極的にアピールしてこなかったことも一因であると思われた。 そこで、都内の看護管理者たちとともに、日本重症児福祉協会(現日本重症心身障害福祉協会:以下、協会)に加入している全国118施設の看護師を対象に調査を行った。人材確保と人材育成に関する実態を明らかにし、われわれが抱える課題と解決の方向性を明らかにすることが目的である。その結果、1)年度当初には前年度退職者数の半数程度しか確保できないマンパワー不足がある、2)そのため、病棟の一部閉鎖や入所者の制限を行わざるを得ない施設がある、3)退職理由は他施設への転職が最も多い、4)新卒常勤職員離職率が非常に高い、5)その背景には重症心身障害看護の困難さがあることがわかった。一方、その困難さを魅力に、魅力をより高い魅力に変えていくことが、重症心身障害看護の専門性の確立につながることもわかった。全国の看護管理者からは研修の充実を求める意見が多数寄せられた。 これまで実践してきた看護ケアの暗黙知を形式知として体系化し、一つの専門分野として内外に認知させていく仕組み作りが求められている。調査結果からそう感じた。この調査結果を根拠に、都立施設と民間施設の連携による研修制度を東京都に要望し、2009年5月、全国に先駆けて「東京都重症心身障害プロフェッショナルナース育成研修」が開講した。 われわれの思いは協会にも通じ、2009年4月、協会に重症心身障害看護専門研修委員会が設置され、2011年4月「協会認定 重症心身障害看護師制度」が誕生した。認定要件は所定の研修(標準カリキュラムは180時間)修了と研究論文又は課題レポートの審査である。委員会では、全国を大きくブロックに分け、地域ごとに共同で研修を行うという考え方で参加施設の拡大を進めてきた。現在、研修を行う教育機関は8カ所に増え、多くの施設との共催で研修が行われている。これまで受講した看護師は214名、協会認定による重症心身障害看護師は172名誕生した。現時点での成果は、1)中堅職員のキャリア支援につながっている、2)院内研修内容の充実につながっている、3)看護に対する理解やキャリア支援の必要性を他職種に発信できている等がある。一方、課題は、1)協会加入以外の施設や関係機関との連携、2)認定者の積極的活用や指導者としての育成、3)シラバスの統一化及びテキスト・教材の共有化等がある。 最後に、重症心身障害看護の今後である。看護教育における重症心身障害看護は、主として小児看護学の“障害を持つ子どもの看護”として教育が行われてきたが、その教育は十分とはいえない。また、高齢化や在宅重症児も多くなってきた今、小児看護学だけでは対処できない問題にも直面している。重症心身障害看護の諸問題は多くの看護分野にまたがっており、他分野の看護職との連携が急務である。 略歴 国立療養所福岡東病院附属高等看護学院卒 産能大学経営情報学部卒 1977年4月~2011年3月 都立病院勤務 2011年4月~社会福祉法人鶴風会 東京小児療育病院に入職し、現在 副院長兼看護・生活支援部長 日本重症心身障害学会 評議員 日本重症心身障害福祉協会 重症心身障害看護専門研修委員会 副委員長 日本小児科学会 日本小児連絡協議会 重症心身障害児(者)・在宅医療委員会 委員
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© 2014 日本重症心身障害学会
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