抄録
目的
親の離婚は子どもの養育に大きな影響を与える。重症心身障害児の親の離婚につながる危険因子を調べ、より良い診療・支援に役立てる。
方法
1995年4月1日から2011年3月31日までの16年間に出生し、豊田市こども発達センターを利用した豊田市在住の重症心身障害児(大島分類1から4群に入る児)52人を対象とした。診療録をもとに、対象児の親の離婚と背景についてまとめ、検討した。
結果
親の離婚は52組中6組(12%)で認められた。男5人・女1人、基礎疾患は周産期障害2人、乳児期の脳炎1人、急性硬膜下血腫1人、ジュベール症候群1人、原因不明の発達遅滞1人であった。合併症はてんかん4人、アトピー性皮膚炎1人、鉄欠乏性貧血1人であった。医療的ケアを必要とした者は4人あり、非侵襲的陽圧換気1人、胃瘻1人、経鼻栄養2人、吸引4人であった。離婚した時期は対象児の平均年齢5歳(0歳7カ月〜13歳)、母親の平均年齢33歳・父親34歳であった。初婚同士5組・母親再婚例1組、母親主婦・父親勤務が4組、共働きが2組であった。兄弟は5組で存在し、障害のある兄弟はいなかった。集団療育・個別療育とも全例で行われ、集団療育は平均1.5歳、個別療育は平均0.9歳から開始していた。いずれも離婚の明らかな原因は診療録からは読み取れず、2組に父親の希望、1組に母親の失踪と記載があった。離婚後の親権は母親5組・父親1組であった。離婚を契機に1人の母親がうつ症状を発症し、健康状態が悪化した児はなかった。
考察・結論
2004年度から2012年度の豊田市の年間離婚件数/婚姻件数比は22〜27%であり、豊田市の重症心身障害児の親の離婚は多くないと考えられ、重症心身障害児を育むことで家族の絆が深まることも十分にあると考えた。一方で、離婚の有無による疾患重症度、家族背景、療育内容などに明らかな違いはなく、どの家庭にも離婚の起こる可能性があることを念頭に診療すべきだと考える。