抄録
近年多く行われるようになったミキサー食の注入には、経口摂取と同じように胃が伸展するため消化管ホルモンの分泌がより生理的となり、表情が良くなり、体力がつくといった効果がある。今回われわれはQOL向上のため、摂食未経験の重症心身障害児にミキサー食注入を試みた。
症例は、生後より経管栄養を開始している経口摂取未経験の脳性麻痺8歳女児。気管切開、胃瘻造設をおこなっている。横地分類A1。声かけに反応なく、苦痛、不快時は脈の上昇と筋緊張が認められる。便性は下痢で、浣腸をおこなわないと排便は見られず、浣腸時は脈の急上昇がある。体重14.8kg。1日3回の濃厚液体栄養からミキサー食の注入に変更した。先行研究よりアナフィラキシーショックの報告があり、ミキサー食開始前にアレルギー検査を行った。経口摂取未経験であることから、健常児の離乳期と同様と考え、移行期間を8カ月間で計画した。毎週体重測定と開始前、開始後1、2、5、10カ月に血液検査をおこない栄養状態を評価。初期に乳酸菌飲料、味噌汁の上澄みから開始し、現行の液体栄養を半固形化した。2カ月後よりミキサー食注入を1日1回昼より始め、以後2カ月ごとに栄養剤を夕、朝の順にミキサー食に変更した。血液検査はミキサー食注入後に電解質、鉄分の改善が見られた。薄茶色の水様下痢も、注入の半固形化後に徐々に形のある軟便に変化し、自然排便を促すことができた。排便時の脈上昇も緩徐になった。ミキサー食移行によって胃腸の消化管運動を促すことができ、吸収能力が適正化したためと思われる。体重は17.2kgに増量し、流涎も減少、肌つやもよくなった。ベッド上臥床より車イス乗車の時間が増え、外部からの刺激を受けることが多くなった。ミキサー食への移行はQOLの向上に有用性があったと考えられる。