抄録
当院は、重症心身障害児者の病床を120床有している。新臨床研修医制度が始まってから、大学医局からの派遣医師が減り、重症心身障害児者医療に接する医師が減っている。研修プログラムでは小児科が選択となり、障害児医療に接する機会もない。障害児者を診る医師には医療的知識だけでなく、リハビリや療育、福祉制度にも精通していることが求められる。このような現場と研修制度との乖離を慮り、障害児者医療の存在を知る機会として、国立病院機構では、重症心身障害児者医療の研修プログラムを作成した。2012年に、国立病院機構の重症心身障害医療研修検討ワーキンググループでは、臨床研修プログラムとしてまとめ、国立病院機構病院に周知した。当院では、2009年度から、初期研修医2年目の医師を対象に、重症心身障害児者の研修プログラムを行っている。当院の研修プログラムの特徴は、医療だけでなく、リハビリテーション、療育、学校、家族など、医療以外の分野の項目も多く、多職種連携の現場に接する機会となっている。対象の医師は、地域の研修指定病院の他、国立病院機構からの希望者である。年間およそ3〜15名の研修医を受け入れている。研修病院のプログラムの中では、地域医療の項の一つとして組み込まれている。5日間コースと、これを短縮した2日間コースとがあり、研修医の予定と希望で選択される。研修を終えた医師からは、医療以外の分野に関わる機会の重要性が指摘されており、他では習得し得ない貴重な研修ととらえていただいている。実務面から見ると初期研修では具体的な業務としての実感が持ちにくく、長期的な障害児者医療への取り組みには反映されにくい。しかし、社会的弱者の身体的社会的側面を知って医療に取り組むことは意義あることと考える。