抄録
はじめに
重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))の栄養管理を行う際の問題点として、しばしば微量元素欠乏症が報告されている。われわれは好中球減少症、貧血を来し銅欠乏症を呈した3例を経験し銅補充療法を行った。3例の銅欠乏の背景を検討し、陥りやすい問題点を抽出し考察した。
症例1
34歳男性。臨床診断は亜急性硬化性全脳炎で、膵炎の反復にて経腸栄養の実施が困難になり、中心静脈栄養にて栄養管理されていた。膵炎初回発症から8カ月後に好中球減少、貧血が出現したが、当初は感染や薬剤による骨髄抑制を疑い治療するも改善せず。中心静脈栄養に銅が含有されていないことに気づき、銅補充開始後すみやかに白血球減少、貧血は改善した。
症例2
新生児仮死後遺症の57歳女性。経口摂取が可能であったが、アミラーゼ上昇と肝機能障害にて禁食、補液を繰り返していた。また、血清亜鉛が低いためポラプレジンクを内服していた。白血球減少と軽度の貧血を認めたため、銅欠乏症を疑い血清銅低値を確認した。ポラプレジンクを中止し、銅補充にて症状は改善した。
症例3
けいれん重積後遺症の62歳女性。慢性呼吸不全、肺膿瘍にて人工呼吸管理をしており、空腸チューブにて栄養管理をしていた。銅欠乏症によりココア、補助栄養剤を使用していたが、補助栄養剤を変更後に貧血、白血球減少が出現した。血清銅低値により銅欠乏症と診断し、銅補充療法にて症状は改善した。
考察
症例1は銅の添加されていない完全静脈栄養、症例2は栄養摂取不良と吸収の際に銅と競合する亜鉛製剤投与による銅吸収不全、症例3は銅含有の少ない補助栄養剤への変更による銅摂取不足に空腸チューブによる栄養管理による銅吸収不全と亜鉛製剤内服が加わり、銅欠乏症に陥ったと思われた。重症児(者)において白血球減少、貧血を呈した場合は銅欠乏症を考慮する必要があると考えられた。