抄録
目的
近年、重症心身障害児者で経腸栄養剤使用によるヨウ素欠乏性甲状腺機能低下がみられる報告が増えている。われわれは、甲状腺機能とヨウ素摂取量について、尿中ヨウ素濃度を用いて評価したので報告する。
対象
当センター入所中の重症心身障害児者で2年以上経腸栄養を実施している51名を対象に調べた。年齢は4歳〜62歳、男22名、女29名、大島分類1:49人、2:1人、3:1人であった。
方法
血中TSH、fT4、尿中ヨウ素濃度(UIC)を測定した。また経腸栄養剤摂取量とヨウ素含有量から1日当りのヨウ素摂取量(I(μg))を推定し、年代別食事摂取基準(厚生労働省2010)のヨウ素摂取推奨量とIとの比(IR)を計算した。ヨウ素欠乏性甲状腺機能低下の基準は、WHOの基準を参考に、血中fT4<0.9(ng/dl 以下略)、UIC<100(μg/L 以下略)とした。
結果
1.51例中27例ではIR(一日当りヨウ素摂取量/食事摂取基準)<1であった。ヨウ素摂取がきわめて少ないと考えられるIR≦0.5は9例であった。
2.UICと体重当りの一日ヨウ素摂取量は正の相関を示していた。また、UICの中央値は105で、UIC<100を示す患者では、IR<1となる傾向がみられた。
3.fT4<0.9を示した患者は51例中8例(16%)であった。このうちUIC<100の症例は4例であった。UIC≧100の4例では、全例、TSHが正常ないしは低値であり、中枢性甲状腺機能低下症が疑われた。
考察
本研究では、半数以上(53%)の症例でヨウ素摂取推奨量を満たしていなかった。WHOによるUIC中央値は、100〜199で、本研究でもUIC中央値は105であった。UIC<100でヨウ素摂取が推奨量未満の症例が多く認められた。fT4が低下している8例で、UIC<100は4例あり、ヨウ素欠乏性甲状腺機能低下の基準を満たしていた。この4例のうち、1例では、ヨウ素摂取推奨量の基準を満たしていた。ヨウ素欠乏を評価するには、UICはヨウ素摂取量とともに有用である可能性が示唆された。