抄録
はじめに
われわれは3年前に当園の入所者290名に血清銅・亜鉛値を測定し、半数以上に亜鉛欠乏がみられ、そのうちの6割が経口で食事摂取を行っていたことを本学会で発表した。その後、1年半前より当園にて食事中の亜鉛の量を増やし、半年以上経過した時点で血清銅・亜鉛値を再測定した。食事中亜鉛の増量に伴い、対象者の平均血清亜鉛値は上昇していたので報告する。
対象
3年前に血清銅・亜鉛値を測定した当園の入所者のうち、経口で食事摂取をしている(経口が主な栄養摂取方法となっているが経腸栄養も併用の7名を含む)156名を対象とした。食事以外の方法で亜鉛を補充している場合は、対象外とした。
方法
2013年9月から2014年3月にかけて血清銅・亜鉛の値を再測定して、3年前の値と比較した。また食事中亜鉛量も3年前と比較した。
結果
対象者の血清銅・亜鉛値は3年前がそれぞれ55〜159(平均101.9)μg/dl、38〜93(平均63.8)μg/dlであったのに対し、今回は73〜173(平均109.0)μg/dl、47〜109(平均73.3)μg/dlであった。血清亜鉛値が3年前より低下したのは対象中23名、不変が5名で、あとの128名は上昇していた。亜鉛低下群のうち2名に褥瘡がみられ、その後亜鉛を補充し、褥瘡は改善した。平均の1日食事中亜鉛量は3年前が常食6.5mg、半流動食4.7mgであったのに対し、今回は常食9.9mg、半流動食13.1mgであった。なお食事中亜鉛増量のために、亜鉛含有量の多いゼリーやふりかけを使う、味噌汁やスープに亜鉛強化の粉末を混ぜる、コロッケや練り物にレバーを混ぜる、半流動食には1日1回牛乳の代わりに亜鉛を多く含むミルクを使用するなどの工夫をしていた。
まとめ
食事中亜鉛量の増加に伴い、血清亜鉛の値は上昇傾向にあった。しかし依然として低亜鉛血症の対象者もおり、必要とする亜鉛の量には個人差があると思われた。亜鉛摂取量の増加に伴う血清銅の低下はみられなかった。