日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
O-2-C35 他施設とのローリングベッド利用例
−有期限ベッド等活用のケアプラン達成度比較から−
鈴木 郁子中林 理恵上原 恵山野 英男河野 展廣栫井 裕子坂田 睦子丸尾 はるみ佐藤 千穂橋本 孝子御園 夏枝丸木 和子
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2014 年 39 巻 2 号 p. 275

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抄録
はじめに 重症心身障害児施設の入所ベッドは、一度入所すると退所は、死亡退院のみということが多かった。当施設は、1998年より有期限入所という新たな仕組みをつくり、有目的、有期限という形で入所ベッドの運用を開始した。その仕組みによって、年間50例以上の退所という実績につながった。この有期限、有目的入所等の仕組みを使い、他の医療機関や療育機関と連携して当施設のベッドを利用する場合をローリングベッドと言っている。この仕組みは、入所前に多機関、多職種で共通の目標を共有したケアプランを作成し、実行する。今回ローリングベッド利用症例17例についてケアプラン達成例と未達成例について比較し、達成、未達成の要因について検討したので考察を加え報告する。 対象、方法 1998年から2014年までにローリングベッド利用事例17例について検討した。 結果 開始平均年齢14.5歳(2歳から34歳)、ローリング施設 医療機関11例、療育機関5例、他の重症心身障害児施設5例(重複利用4例)、達成期間平均3.78年(3カ月から7年) 利用目的達成 13例、未達成4例 考察 未達成例より、達成例の方が多くを占めた。平均達成期間として平均3年以上要し、長期戦を強いられる問題である。達成例、未達成例を比較してみると達成する要素としては、ローリング施設との情報の共有と信頼関係は大事な要素であると考えられた。長期戦であるため、まめにケース会を行い、目的の確認や、情報のずれについての修正をかけていく作業は大事である。また、未達成例の要因として、医療度の問題や家族力の問題が大きいと考えられた。これらの解決においては、多職種が連携していくことが有効である。またローリングベッドを利用していく過程で家族の考え方にも変化が見られていくことの確認もできた。これらのことより、支援者が、ケアプランを立てるときに基本的に何を目的にしているかという価値観の共通理解が最も大事であると考えられた。
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© 2014 日本重症心身障害学会
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